検診率は上げたいが…

しかし、検診も万全ではない。あえて言うまでもないが、検診で乳がんになることを防ぐことはできない。また、早期で見つけても進行を止められない性質のがんもある。さらには、科学的に効果が証明されている検診にも弱点がある。“がん検診は完璧ではない”ことも理解しておかなければいけない。

私自身、乳がん経験者として、ピンクリボン活動に関わることもあるが、日本では“ピンクリボン=乳がん検診へ行こう!”という色合いが濃いことが気にかかっている。乳がん検診を定期的に受けて早期発見することはもちろん大切だけれど、先にも言ったように検診で乳がんを防ぐわけではない。もうピンクリボン=検診啓発だけのイメージは終わりにしなくてはいけないと感じている。

また有名人の乳がん報道があると、「きっと乳がん検診をしなかったから発見が遅れたんだ」と言う人もいるだろう。検診を受けなかったのだから、自己責任であるという意味にもとれる発言がどれだけ当事者を傷つけることか……。乳がんは毎年検診を受けていても、見つからないものもあり、検診で「異常なし」と通知が来た後、自分でしこりや自覚症状があって検査を受け、乳がんが見つかるケースもある。それに、介護などいろいろな事情があって、検診へ行くタイミングを逃すことだってある。

これだけ乳がんに罹患する人が多い現状でピンクリボン運動にもっとも大切なことは、乳がんになった人を社会で支えていくこと。もし乳がんが見つかったとしても正しい情報を得られる機会をもち、必要なサポートが受けられることが大切で、検診だけを声高に叫んで終わっていては、これからがんと共存していく人たちの支えにはならないのだ。

日本人に多い“高濃度乳房(デンスブレスト)”

でも、なぜ乳がん検診を受けても、見逃されるものがあるのだろうか。理由はいくつかあるが、大きな原因のひとつが、“高濃度乳房=デンス(濃い)ブレスト(乳房)”だ。

現在、乳がん死を下げる検診として、エビデンスが認められているのは、“マンモグラフィ検診”だ。ところが、マンモグラフィ検診では見つけにくい体質の乳房を持つ女性は少なくない。乳房はおもに乳腺と呼ばれる組織と脂肪でできている。エックス線を用いるマンモグラフィ検診の画像は、がんのしこりも乳腺組織も白く映し出すため、乳腺組織が密な“高濃度乳房(デンスブレスト)”だと、しこりが隠れとても見えにくいのだ。画像診断医がよく例える『雪の野原で、白いうさぎを探す』ような感じだ。