「北方領土返還」
ロシアからのサインを読み解く

「勢力均衡」に舵を斬る鳩山外交
佐藤 優 プロフィール

< 領土問題 露議員「日本政府、過熱化望んでない」

 ロシア下院(国家会議)のルスラン・コンドラトフ議員は13日、モスクワで同日行われたコサチョフ国際問題委員長と鈴木宗男・衆院外交委員長の会談についてコメントし、「日本政府に情勢を過熱化させる意図はないようだ」と述べた。

 議員はプーチン首相率いる与党・統一ロシアの所属で国際問題委員会の委員。コメントは統一ロシアのホームページ上に掲載された。内容は以下の通り―。 

「鈴木宗男氏によれば、鳩山由紀夫政権は北方領土問題の解決を巡る情勢を強行的に過熱するつもりはないようだ。議会の代表(=鈴木氏)が自国世論だけでなくロシア政府および議会との活発な協力を望んでいると明言した。 

 ロシアは同問題について、一度ならず日本との交渉の姿勢を確認してきた。ただ理解する必要があるのは、南クリル諸島(いわゆる北方四島)はソ連の一部として存在し、ロシアがその継承者となったということ。

 わが国はクリルを極東の一部とみなしている。その極東の発展は国家の優先事項のひとつだ。つまり、日本への返還のテーマから最終的に離れる時なのだ。 

 また、政府に草案を提出した2025年の極東社会経済発展戦略では、クリルにも大きな注意が払われている。パラムシル(幌筵)、択捉、国後、色丹の島々には生物資源分野の大規模なクラスター(産業集積地)が作られる。食品・医療・燃料用に魚ほか海産物の加工開発を活発に進めていく。

 さらに、島内では現代型の空港や社会インフラの建設も計画されている。」 >

(5月13日「ロシアの声」日本語版HP)

 ここで重要なのは、< 日本への返還のテーマから最終的に離れる時なのだ >という表現だ。要するに、領土問題を解決するということである。このシグナルを、日本人に理解できるように読み替えると次のようになる。

「日本が、北方四島が日本領であると主張していることは理解している。ただし、ロシアの現時点での立場は、北方四島は戦争の結果、ソ連領になり、ロシアがそれを引き継いでいるのでロシア領ということだ。
  極東の発展はロシアの国益に直結する。生物資源開発や社会インフラの整備で、極東開発に日本が協力するならば、北方領土問題自体を最終的になくす、すなわちロシアと日本の双方が譲歩して解決することができる」

 15年前ならば、このような読み解きを日本の外務官僚が行うことができた。また、記者たちもロシアからのシグナルを懸命になって読み解く努力をした。現下日本では、ロシアからのシグナルを受け止め、読み解くという問題意識が外務官僚、現場記者の双方から失われている。

 官邸主導で、勢力均衡外交に対応できる態勢を構築しないと、北方領土交渉を軌道に乗せることはできない。

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著者:佐藤優
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