21017年12月9日、エンゼルスタジアムで入団会見に臨んだ大谷。期待は大きかったが、ここまでの活躍を予想した人はいないだろう

メジャーの先輩が、大谷は新人王を穫れなくてもいいと思う理由とは?

タイトルより重要なことがある

メジャーには、過去に、野茂英雄、佐々木主浩、イチローが受賞している記者投票による新人王と、選手間投票による新人王のふたつがあるが、エンゼルスの大谷翔平は、その両方で有力候補となっている。選手会は、そのリリースで、大谷を「ベーブ・ルース以来、同シーズンに50イニングに登板し、15本塁打を記録した唯一の選手」と紹介している。

日本のファンは大谷の新人王獲得を我がことのように期待しているが、エンゼルスの先輩・長谷川さんによると、アメリカでは選手もファンもあまりタイトルには固執していないという。

 

新人王争いは大谷よりアンドゥーハが最有力候補

いよいよワールドシリーズを残して今季のメジャーリーグは終了します。

こちらではヒューストンやボストンの強さの理由を各メディアがそれぞれ分析していますが、日本でのメジャーの報道はやはり、大谷翔平選手が中心なのでしょうか。特にトミー・ジョン手術を経ての復帰の青写真や、Rookie of the Year Award(新人王)についての多いような印象です。

復帰へのカウントダウンは、今、予想してもそこまで意義はない気がします。オフはリハビリに集中することが何よりも求められます。

新人王に関しては、もちろん大谷選手が獲得したら日本人としては嬉しいですが、ヤンキースのミゲル・アンドゥーハ選手が最有力でしょう。

彼はレギュラーシーズンの149試合507打席で打率.297、27本塁打、92打点を残しています。
 
対して“打者大谷”は104試合で367打席、打率.285、22本塁打、61打点です。

メジャーでも、大谷ほどでかいホームランを打てるバッターはそうはいない(photo by gettyimages)

単純に比較するとアンドゥーハ選手のほうが上回っています。大谷選手は規定打席に達してないのもマイナスかもしれません。そこに“投手・大谷”の10試合で51回2/3、4勝2敗という成績がどこまでプラスに働くのか。日本のファンが期待を寄せているポイントだと思います。
 
実際に新人王の投票権を持ったBBWAA(The Baseball Writers' Association of America/全米野球記者協会)の記者の中にも、シーズン中に「ベーブ・ルース以来の二刀流は夢がある」などと書いたり、「オオタニのインパクトは野球に新しいものをもたらした」と絶賛している書き手もいます。それは本音ですし、事実でしょう。

メジャーでも、大谷ほどの豪速球を投げる投手はそうはいない(photo by gettyimages)

ただ、それでも彼ら、記者だけでなくアメリカ人のファンは、どうしてもデータ信仰が強いといいますか、野球を数字で捉えている部分は大きい。
 
逆に言えば、大谷選手が受賞したら、その合理的な野球の見方を覆すほどの賞賛と期待を集めた、という証明に他なりません。新人王の発表は現地時間の11月12日です。どのような結果になるか楽しみにしています。

大谷は新人なのは、「アメリカ イズ No.1」だから

その新人王ですが、毎年、日本人選手がレースに候補に挙がるとある論争が起こることでも知られています。
 
過去、日本人選手で受賞したのは1995年の野茂英雄(ロサンゼルス・ドジャース)、2000年の佐々木主浩(シアトル・マリナーズ)、2001年のイチロー(同)の3人です。
 
みなさんもご存知のとおり、彼らは日本でキャリアを積んで海を渡りました。一軍の稼働だけで言っても、野茂君は5シーズンで78勝、佐々木さんは10シーズンで229セーブ、イチロー選手は9シーズンで1278安打をそれぞれ積み上げ、数々のタイトルも獲得しています。ちなみに大谷選手は日本で5シーズンを過ごし、42勝296安打48本塁打という数字ですね。
 
つまり、それだけの実績を残してきた選手を「ルーキー」として扱うのはどうなのか、新人王の資格があるのか、そういう議論が起こります。
 
確かに一理あります。少し話はズレるかもしれませんが、イチロー選手の通算安打数も日米合算するのはどうなのか、という話題もありました。
 
ただ、この新人王に限って言えば、日本から移籍した選手は今後もこのままルーキーとして扱われるでしょう。
 
理由はシンプルです。ほとんどの記者をはじめとしたアメリカのファンは、「メジャーリーグこそナンバー1の野球」だと信じて、それを1ミリも疑っていないからです。
 
つまり日本でのキャリアを考慮してしまうと、日本の野球がメジャーと同格に扱われることになる。彼らは日本の野球を認めはいますが、やはり自分たちの野球が上だと信じているものなのです。
 
審判として初めて野球殿堂を果たした「アンパイアの父」ことビル・クレムさんは、「Baseball is more than a game to me, it’s a religio(私にとって野球はゲームを超えたもので、それは宗教だ)」、そんな趣旨のセリフを残していますが、アメリカ人にとってメジャーリーグというのは、それだけのものなんですね。