軽自動車は人気の高いカテゴリーだから、ライバル車同士の競争は激しい。燃費性能を含めた経済性にメリットがあるから、ユーザーは出費に敏感だ。
したがって価格競争も激しい。商品の価値は機能と価格のバランスで決まるから、自動車業界では類似した商品同士で価格を競うのは珍しくないが、軽自動車は特にその傾向が強い。
基本的には、後から発売された車種ほど買い得になる。競争が激しく、商品開発はライバル車を横目で見ながら進められ、少しでも優位に立とうとするからだ。
ユーザーの関心が高い安全装備、燃費、車内の広さ、荷室の機能、シートアレンジなどをライバル車よりも進化させ、なおかつ価格を割安に抑える。いわば「後出しジャンケン」を延々と続けているような状態だから、各車がフルモデルチェンジを行う度に、機能や割安感が向上。その結果、商品力が高まり、軽自動車は新車として売られるクルマの40%近くを占めるようになった。
ちなみに軽自動車の売れ行きが目立って伸びたのは、1998年に実施された軽自動車の規格変更以降だ。この時には16車種の新型軽自動車がほぼ同時期に発売され、未曾有の新型車ラッシュになった。
つまり20年間にわたり「後出しジャンケン」の競争を続けているから、かなり煮詰まっている。そのために軽自動車の価格は、ライバル車同士で比べると、一定の狭い価格帯に収まる。軽自動車は薄利多売の商品で、競争の結果、価格が下がり切ったわけだ。
そして軽自動車は一種の「小宇宙」で、小型/普通車に設定される大半のカテゴリーを手に入れられる。トヨタランドクルーザーのようなオフロードSUVが欲しければスズキジムニーがあり、ホンダNSXのようなエンジンをボディの中央に搭載するミッドシップスポーツカーを求めるならホンダS660が用意される。軽トラックをベースにした特装車には、ダンプトラックや保冷車もある。