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認知症の人達が教えてくれた「障がいがあっても幸せに暮らせる介護」

こうすれば家族の負担も減る

グーグルに答えはない

親の介護を理由に離職しなければならない人の数が、高止まりしたまま減る傾向がみられません。総務省の「平成29年就業構造基本調査」によれば、二〇一二年の調査では十万人強、二〇一七年九月までの一年間でも九万九千人とほぼ横ばいです。

それにしても、毎年十万人ものサラリーマンが、介護を理由に会社を辞めるとはただ事ではありません。日本経済にとっても大損失です。そのうえ、収入の激減や介護のストレスなどが原因で、約八割の現役世代が将来に不安を抱いています。

 

内閣府の「高齢者の健康・福祉」によると、日本で認知症と診断された高齢者は年々増え続け、二〇一二年には七人に一人だった人数が、二〇二五年までに約七百万人、五人に一人が認知症になる可能性があるといわれています。

デイサービスの利用や地域包括ケアといった対策もありますが、現状は家族に頼らざるをえず、特に認知症になると、うまくコミュニケーションもとれないため「こちらの言うことがすべてわからなくなってしまった」「自立できないから面倒をみなければ」という気持ちから離職に至ってしまうケースもあるように思います。

認知症は、脳の神経細胞がなんらかの原因によって減少したり、壊れてしまう進行性の病気です。根本的な治療法はありませんが薬で進行を遅らせることはできます。認知症になっても、突然「なにもできなくなる」わけではなく、徐々に認知能力がなくなっていく病気なのです。それならば逆に、進行を遅らせる介護の仕方もあるはずです。

「介護は想像以上に大変」とよく聞きます。それぞれ事情があると思いますが、しかしそれは、認知症に対する誤解から間違った介護をすることで、介護する人とされる人の間に壁を作り、両者の関係を悪化させていることが一つです。

では、これほど情報があふれているのに、なぜ間違った介護をするのでしょうか。

先に結論を申し上げますと、認知症の人の介護は認知症本人に訊くべきなのに、はなから訊いても無駄だと思っているからです。

ドクター・グーグルという言葉があります。

親を介護することになった人のほとんどが、介護経験のない人たちです。それがいきなり介護することになり、はたと困ってしまいます。そこで問題の解決を、グーグルに託して検索するのですが、それでうまくいったという話はほとんど聞きません。

まずネット情報は、それが正しいかどうかは判然としないことがあります。そしてもう一つは、介護のことを知らない当人が、自分に都合の良い情報だけをチョイスして、手当たり次第に実行して、かえって親との関係を悪化させてしまうことです。

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私の知人のAさんは、父親が認知症になってすっかり人生が狂ってしまいました。

Aさんには妹がいますが、二人とも自宅を離れて独立しています。実家は両親二人だけの生活でした。そこへ父親が認知症になり、しばらく母親が老老介護をしていたのですが、年老いた母親では十分なケアができなくなりました。

もちろんヘルパーにも来てもらいましたが、それだけでは十分でなかったようで、Aさんが介護を手伝うことになりました。遠距離介護だったのですが、火を使わないようにガスコンロをIHクッキングにリフォームしたりしてしばらくは通ったものの、心配でとうとう会社を辞めて親の介護に専念することになったのです。

認知症の父親は、息子のAさんが作った料理を、「こんなまずいものはが食えない」とわがままを言いケンカになることもありましたが、息子が帰って来たことが嬉しかったようで、最初のうちはそれほど深刻ではありませんでした。

ところが、だんだんと父親は不機嫌になり、口もきかなくなります。ときにはAさんに怒鳴ることもあり、体を支えてやろうと手を出したら叩かれる始末です。これでは何のために仕事をやめて介護しているのかわかりません。

症状が進んだのかと思ったのですが、週3日通っているデイサービスのスタッフに聞くと、事業所では楽しそうにしているといいます。でも自宅に戻ればやっぱり不機嫌。そのうちこっそり家を出たまま帰らなくなりました。徘徊です。市役所の防災無線で呼んでもらって無事発見できたのですが、Aさんにはショックでした。

それにしても、せっかく息子が仕事を辞めて帰ってきたのに、なぜこうなったのでしょうか。Aさんからその様子を聞いて、私なりに分析してみました。

ここで大切なのは、息子であるAさんと認知症の父親、そして家族全体の関係性です。