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スマホゲーム依存症の息子がハマった「抜け出せない悪循環」

息子がゲーム依存症になってしまった⑤

「ゲーム依存症」、あるいは「ゲーム障害」とは、日常生活が破綻するほど、持続的、反復的にゲームにのめり込んでしまうことを指す。今年6月18日、WHO(世界保健機構)は、この「ゲーム依存症」を精神疾患として正式に認定した。

今世紀に入ってから、人間の生活を劇的に便利にしたスマホ——その中に潜んでいた悪魔に一人息子を虜にされてしまったライターが、あまりにこの疾患にたいして無防備な日本社会に警鐘を鳴らすため、現在進行形で続く「ゲーム依存症」との戦いをレポートする。

大学合格を機にスマホを与えた途端、ゲームにはまりこんでしまった息子。入学からわずか1ヵ月。大型連休明けには学校へ行くことも難しくなってしまう……。

(第一回はこちらから→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57378

レポートを書くのもゲームをやりながら

大学生になると同時にスマホゲームにのめりこみ、ゴールデンウィークを過ぎた頃から遅刻するようになった息子。その後の経過は、ゲーム依存症の子どもたちに典型的なパターンをたどっていった。専門病院の「家族の会」で話を聞いても、その過程や症状には共通点が本当に多い。

息子の場合はもう大学生だから、遅刻しようと欠席しようと本人の責任だ。そう考えてはいたものの、朝起きる時間になっても起きてこなければ声ぐらいはかける。息子も朝は苦手なことを自覚していて、特に出欠をとる科目の日は起きてこなかったら声をかけてくれと言っていた。それでも息子は遅刻と欠席を繰り返すようになった。たとえばこんなふうに。

「そろそろ起きる時間だよ」

朝7時を過ぎても起きる気配がなかったので、私は息子の部屋を開けて声をかけた。だが、息子はぴくりとも動かずに熟睡している。どれだけ遅くまでゲームをしていたのだろうか。

 

「今起きないと遅刻するんじゃない?」

何度か声を掛けてもカーテンを開けて明るくしても息子は起きなかった。仕方なく放置し、ようやく起きてきたのは10時を過ぎた頃だった。

「昨日は何時までゲームをしていたの?」

冷めた朝ご飯を食べる息子は返事をせずに黙っている。遅刻する日の朝は「頭が痛い」「体がだるい」など体調不良を訴えることも多い。何より不機嫌なので、いきおいこちらも小言が増えてしまう。

「朝起きられないのは早く寝ないからでしょう。いい加減、夜はゲームをやめて早く寝るようにしないと、大学を続けられなくなるんじゃない」
「うるさい。いつまでやってもこっちの勝手だろ」

息子はそれだけ言うと、どうせ午前の授業は間に合わないからと部屋にこもってゲームをやり続ける。こうなるともう雰囲気は険悪になり、とりつく島はなくなってしまう。声を掛けても無視をされ、それ以上しつこく言うと逆ギレされるのが関の山だ。午後に授業があっても出たり出なかったりだった。

いったん依存症になってしまえが、家族だけで対応するのは難しい(photo by istock)

こんなこともあった。前期も半ばになり、レポートや課題がたびたび出るようになった。大学に行けばパソコン室があり、大学側の話でも個人的なパソコンはまだ必要がないと言っていたから、我が家では息子にパソコンを買い与えていなかった。そのため、家でレポートなどを書くときはリビングにある家族共用のパソコンを使っていた。

「あ、そうだ。レポートを書かなきゃ」

ある日のこと、珍しく息子が急に言い出してパソコンを立ち上げた。翌日が締め切りだという。大学に入ってからは本も読まなくなってしまったし、テレビも見なくなっていた。家で息子が勉強らしいことをやるのを見るのは初めてだった。

ところが、キーボードの手前にスマホを置いてゲームをやりながら書いているので一向に進まない。最初はゲームの合間に何行か書いていたようだが、そんな状況でまとまった文章が書けるわけがない。結局わずか15分ほどでイライラして止めてしまった。

「締め切りが明日なら、今日中に書かないと間に合わないんじゃない」
「大丈夫」
「そんなこと言ったって、レポート出さなかったら単位は取れないでしょう。ちゃんとやってよ」
「大丈夫だよ。なんとかなるから」

ふて腐れたようにそう言って、またゲームをやりに部屋に戻ってしまった。その夜は9時くらいになって、息子はオンラインでゲーム仲間とチャットを始め、ゲームは深夜まで続いた。無論、レポートは手つかずのままだった。

普段は学校でレポートを仕上げていると言っていたが、ウソだったのではないかとにらんでいる。その証拠に、前期で単位が取れた科目は、出席すればよいものや、受験前の学力でなんとかなる試験を受ければよい一部の得意科目だけだった。