アラサー女子、不調を感じて「断食サナトリウム」に駆け込む

とある高原での6日間の記録
瀬戸 基 プロフィール

ピップエレキバンの100倍のα波

入所後、体重と体脂肪率、腹囲、血圧を測定したのち、リフレッシュルームに向かうよう言われた。

「リフレッシュルームって何をするんですか?」
「ケアマシーンを使って体を整えます」

え、もう整っちゃうの? どんな最新医療マシンが備わっているのだろうか。

恐る恐る戸を開けると――そこには町工場が広がっていた。なんかこう、全体的に青緑の鉄製の機械が10体くらい鎮座している。『下町ロケット』とかでたぶん観たことがある。簡単にいうと、精巧なネジとかを造っていそうなところだ。

こんな色の装置がたくさん photo by gettyimages

「では、ここに横になってください」

ケアマネージャーのおねえさんに誘導されて、青緑の台に寝かされる。気分はもう精巧なネジ。上からおばあちゃん家にありそうな毛布をかけられ、両足と腹とおでこにコードの付いたゴム製の輪っかのようなものを載せられたとき、猛烈に不安を覚えた。

「こ……、これはいったいどういう器具なんですか」
「ピップエレキバンの100倍くらいのα波が出ます」
「!?」

ピップエレキバンの……?
100倍くらいの……?
α波が……?
出る……?

 

理解が追いつかない。だが、おねえさんのあまりに無垢なニッコリに押され、
「すごいですね」
と返してしまった。仕方が無いので、大人しく20分くらい青緑台の上に寝そべる。

正直なところ、α波がなんなのかさえ分からないので、何も思うことがない。何も考えないで、ただボーっとするなんて久し振りだ。

そのうち、おでこの辺りからじわじわしたものを感じた気もしたが、おそらく、おねえさんの期待に応えようとするサービス精神が発揮されてしまったのだろう。

ちなみに、居室に戻ってからGoogleに聞いてみたが、「ピップエレキバン α波」と検索しても、「覚醒・第六チャクラを開く」という動画くらいしか出てこない。夢でもみていたのだろうか。