「博物館 網走監獄」の正門。左が明治の脱号王・寅吉の蝋人形

漫画『ゴールデンカムイ』の脱獄王に実在モデルがいるって知ってた?

酒席で絶対ウケるおもしろ雑学 監獄編
明治時代の北海道を舞台にした人気漫画『ゴールデンカムイ』には、網走〈あばしり〉監獄から逃げたという脱獄の天才が登場する。その脱獄の天才には実在のモデルがいた。今、実在の脱獄王が収監されていた当時の監獄はそのまま保存され、博物館となっている。そこには、脱獄王が実際に破った部屋があり、天井を見上げると、その脱獄王と対面できる。

門前で「明治の脱獄王」がお出迎え

女満別〈めまんべつ〉空港に着陸すると雪国であった。青空の底が白くなった。

当たり前か。2月の北海道だもの。

「博物館 網走監獄」は前々からぜひとも行きたい博物館だった。ほとんどの一般小市民にとって、〝塀の中〟はそれこそ宇宙や深海なみに遠い場所のはず。

幸いぼくはまだ入ったことはないし、正規のルートで入るつもりもさらさらないけれど、イケナイ場所ほど見たくなるのが人情というもの。おまけに北の開拓地、最果ての網走とくればなおさらロマンチックだ。

空港から網走監獄まではバスが便利である。白い平原を走る「女満別空港線」に揺られ、氷結した網走湖や、現役の受刑者がせっせと雪かきしているホンモノの網走刑務所などを横目に見ながら網走駅まで20分ほど。そこで路線バスの「網走市内観光施設めぐり線」に乗り換えてまもなく到着する。

 

「博物館 網走監獄」は実際に使用されてきた監獄の建物を移築復原・再現し、公開している博物館だ。なかには木造では世界最古にして最大と言われる明治29(1896)年築の獄舎もあり、8つの棟が国の重要文化財に、6棟が登録有形文化財に指定されている。

受付の脇のゲートから入場すると、レンガ造りの重厚な正門が現れた。その両脇に人が立っていると思ったらマネキンだ。向かって右側の黒い制服は看守だろう。オレンジ色の服を着てほうきを手にした左の一体は……横の看板を見ると「明治の脱獄王 五寸釘の寅吉」とある。

監獄博物館でいきなり脱獄王とは粋な計らいと思いきや、看板をよく読むと、過去六回の脱獄に成功した寅吉も網走ではすっかり改心して模範囚として過ごしたとある。正門でほうきを構えているのは、これが釈放間近の模範囚だけに許される名誉な仕事のため。なんだ、優等生か。脱獄話を期待したのに、と思った人は残念。

明治の脱獄王「五寸釘の寅吉」

でも、あとで網走刑務所を脱獄した「昭和の脱獄王」もちゃんと登場するのでしばしお待ちを。ちなみに、五寸釘というあだ名は、脱獄後事件を起こしたときに、五寸釘を踏み抜きながら12キロも逃走したことによるそうです。

アーチ形の正門の両側に部屋があり、向かって右側は看守の控室、左は面会者の待合室だった。予想通りマネキンがいる。東京から網走まで今は飛行機であっという間だが、昭和に入ってすぐの頃は3泊4日もかかったという。30分の面会時間のためにそれだけの時間と旅費をかけなければならなかった網走はやはり厳しい流刑地だったに違いない。

ルートにしたがって見ていけば、典獄(てんごく/今の刑務所長)室のある洋館風の「庁舎」に始まり、苦しそうな寝顔のマネキンが並んでいてちょっと気色悪げな「休泊所」や、囚人たちの過酷な重労働がわかる「歴史館」など、見どころはいろいろある。

監獄外でもさ作業時に宿泊する休泊所。再現された内部の蝋人形がリアルだ
刑務所内の風呂。こちらも収監者の蝋人形の入れ墨が生々しい

とはいえ、クライマックスはやはり実際に受刑者を収容した「五翼放射状平屋舎房」だ。