後悔しない人生を過ごすための「年代別傾向と対策」

こころの老い支度のポイント
和田 秀樹 プロフィール

認知症患者の身に起こるこれらの現象は、「退行」といえばたしかに退行なのかもしれません。

しかし認知症にしても老いそのものにしても、皆が「だんだん子どもに戻っていく」あるいは「だんだん全体的に知能が下がっていく」といった、今まで一般的に考えられていたようなモデルでとらえられるものではないことだけはまちがいありません。

たとえば、5分前に聞いたことも覚えていないのに、経理の仕事はちゃんとできるというように、ある能力は大きく衰えているのに別の能力はほとんど元のレベルが保たれている「まだらボケ」という言葉は盛んに使われます。

これは、脳梗塞の後遺症や多発性脳梗塞のように、脳の一部だけが損傷した際に起こると考えられていましたが、私の見るところ、ほとんどの認知症は多かれ少なかれ、まだらにボケているのです。

 

人生の未来予測図を携える

私が今回『年代別 医学的に正しい生き方』を書こうと思ったのは、ある程度の年齢に達するまで「老いに抗う」にしろ、その後に「老いを受け入れる」にしろ、どの年代でどういうことが自分の心身に生じ、それは実際にはどのようなものなのかを教えてくれる「人生の未来予測図」のようなものを携えていることが、「平均寿命80歳超」時代を生きる私たちの大きな助けになりうると考えたからです。

そのような考えのもとに、未来予測図の一覧表を作成しました。身体の変化から社会生活まで、おおよそどういったことが起きるのか一目でわかるようになっています。

ただし、「それぞれの年代に起こる」と記している出来事や病気、心身の変化などがいずれも一般例であり、目安にすぎないことはお断りしておかねばなりません。

年代別未来予測図
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本書の特色といえるのは、将来自分の心身になにが起こるのかという「傾向」を述べるだけでなく、私が30年以上にわたって高齢者専門の精神科医をつづけてきた経験から、可能なかぎりの「対策」を提言している点です。

たとえば、40代であれば、前頭葉が萎縮するためにその機能が低下し、意欲や創造性、感情のコントロール機能などが衰えはじめる、いわゆる感情の老化が起きてくるのですが、それに対して、どのような対策ができるのかを私なりに提案しました。

あるいは、この時期から人間ドックなどで検査データの異常などが見出されるわけですが、それに対して、世間で言われる正常値にすればいいという発想でなく、高齢者を見てきた経験から私なりの対策を書きました。

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もちろん、そのすべてが正解と言うつもりはありませんが、多少なりのヒントと思っていただければ幸いです。少なくとも何の備えもしないより、そのような状況に陥ったときの不安やパニック心理は弱められるはずです。

個人差はありますが、しかし、人間には老いはいつかやってきます。避けられないのであれば、覚悟をしたうえで、可能なかぎりの対応を考えてみようということです。

原発事故にしても、起こらないことを前提にしていたために、起こった際のマニュアルがほとんどなかったと聞きます。どんなに受け入れがたいことでも、起こるのが不可避なことを認め、前もって対応するに越したことはないのです。

*『年代別 医学的に正しい生き方』の「はじめに」より抜粋・編集をおこないました