Photo by iStock

後悔しない人生を過ごすための「年代別傾向と対策」

こころの老い支度のポイント
40代は脳・前頭葉の萎縮に、50代は身体よりも精神の健康に注意――。どの年代で何が起きるのかを知っておくだけで、これからの人生も怖くない! 話題作『年代別 医学的に正しい生き方』において、和田秀樹氏が語る「人生の未来予測図」とは?

アンチエイジングは「悪いこと」なのか?

厚生労働省が2017年7月27日に発表した「平成28年簡易生命表の概況」によると、2016年における日本人の平均寿命は、男性が80・98歳、女性が87・14歳となりました。

日本人の平均寿命は、戦後1947年にはじめて統計が取られるようになりましたが、初年度は男性50・06歳、女性53・96歳でした。戦後70年で、日本人の平均寿命はじつに30歳以上も伸びたことになります。

寿命が伸び、人生において与えられた時間が長くなったわけですから、そのなかの若々しくいられる期間をできるかぎり長くしたい、と多くの人が思うようになるのは自然な流れです。

 

だからこそ近年、見た目だけでなく体力、気持ちのあり方など総合的な若さを保つための「アンチエイジング」が注目されるようになり、そのための技術や食生活を紹介する番組や雑誌の記事が性別を問わず人気を集めるようになっています。

その一方で、アンチエイジングという言葉や概念に反発を覚える人も少なくありません。2016年8月には女性誌『GLOW』9月号(宝島社)に、女優の小泉今日子さんと社会学者の上野千鶴子さんの対談が掲載されました。

ここで上野さんが「アンチエイジングって言葉が、大嫌いなんです」と述べたのに小泉さんも賛同し、つづいてつぎのような発言をしています。

ずっとアイドルの仕事をしてきて、30代の半ばくらいから『かわいい!』って言われる中に、『若い!』という声が入ってくるようになって。これ違くない?喜んじゃいけないんじゃない?って。(中略)これ(引用者注:美魔女現象に)は抵抗しなきゃと。私は『中年の星』でいいんじゃないかと思ってます

この小泉さんの発言はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などでも話題となり、多くの称賛の声が寄せられました。人間である以上、老いに抗うよりも避けられぬ自然なこととして受け入れるほうが正しいと感じ、アンチエイジングの流行を苦々しく思っていた人がじつは多かったということの、ひとつの現れでしょう。

「老いに抗う」と「老いを受け入れる」

ただ高齢者専門の精神科医として、ふだん高齢者に接している私は、老いに対する考え方が「老いと闘う」派と「老いを受け入れる」派に二極化し、両者が対立概念のようになってしまっていることに違和感を覚えています。

photo by iStock

たとえば、仮にある人が「100歳になっても40代の頃と同じ体力や外見的な若々しさを維持したい」と願っているのであれば、いくらなんでも非現実的ですし、そのような願望に固執すべきでないのは言うまでもありません。

しかし、「老いに抗おう」と考えることは、人生のある時期までは決して無駄なことではありません。最新の医学をはじめとする、最先端の知見を学び実践すれば、40代や50代ではもちろん、人によっては60代に入っても、かなりの程度まで外見だけでなく、脳や血管などの若々しさを保つことは現実的に可能になっています。

もちろん人によっては、多発性脳梗塞やパーキンソン病、若年性アルツハイマーなどに50代や60代のうちに見舞われ、普通の人よりも早い段階で老いを受け入れざるをえないこともあるでしょう。

しかし幸いにもそういった病気とは無縁で暮らせていて、ちょっとの努力をすれば老化のスピードを遅らせることができる人がことさらにアンチエイジングを嫌うのも、それはそれで不自然なのではないでしょうか? 

「初老」という言葉が40歳の異称として使われていた明治・大正時代ならいざしらず、平均寿命80歳超の時代に生きている我々が60代で老け込んでしまうのは、そこからの人生の長さを思えば早すぎる、と私は思います。