妻を亡くした男性は、余命が短くなる可能性が30%も高かった

「自立」が豊かな終活につながる
小谷 みどり プロフィール

8割以上が病院や施設で亡くなっている

いまや、8割以上の人が病院や施設で亡くなっています。しかし、配偶者と長年暮らした思い出の詰まった我が家で、最後まで過ごしたいと思う人もいるでしょう。あるいは、せっかく誰にも気兼ねせずにすむ、自由な一人暮らしをしてきたのに、いまさら老人ホームや介護施設には入りたくないと思う人もいるでしょう。

一人での生活には家が広すぎたり、暮らし自体が不安になったりすれば、住み替えるという選択肢もあります。しかし一人暮らしの人は、賃貸住宅や老人ホームに入居する際に大きな壁にぶちあたります。多くの高齢者向け賃貸住宅では、入居の際に「連帯保証人」と「身元引受人」を立てることを義務付けているからです。老人ホームのなかには、連帯保証人を二人以上必要とする施設もあります。

配偶者と死別した方もいつか必ず、自分自身がこの世を去る時がやってきます。夫婦が両方とも亡くなった後、家の片付けや遺品整理は誰がしてくれるのでしょうか。いつか、誰かがやらなくてはならないのが遺品整理です。遺品に思い出のない人にとっては単なる不要品に過ぎません。

ましてや亡くなった後、一人暮らしだった故人が住んでいた家の中をいつまでもそのままにしておくわけにはいきません。賃貸住宅に住んでいたのなら、早急に片付けないと、無人なのにその間、家賃がどんどん加算され、無駄な出費が発生します。

子どもや親族が遠くに離れて暮らしていたら、片付けだけのために故人の自宅に何度も通ったり、長期に滞在したりするのは大変です。時間的にも金銭的にも、遺品整理や家の片付けは、遺族に大きな負担となることは留意しておく必要があります。

 

終末期から死後の希望を誰に伝えるか

あらかじめ考えておくべきことは、片付けや相続財産だけではありません。「どう死を迎えたいか」という問題を考えておくことも必要です。

例えば、治癒の見込みがなく、死が避けられない段階になったとき、「治療に苦痛が伴うとしても、病気に対する治療(生命をなるべく長くする治療)=延命治療」か、「生命予後を可能な限り長くするよりも、痛みや苦痛を取り除く治療=緩和治療」か、自分ならどちらを選択したいか、これまで考えたことがあるでしょうか。
 
老いや死は誰にも平等に訪れますが、自立できなくなっても、没イチの人には頼れる配偶者はいません。子供がいたとしても、子供も結婚して家庭を持っていれば、そうそう手間をかけるわけにはいかないと、みんな内心では思っているはずです。「家族に迷惑をかけたくない」という思いは、そんなところからくるのでしょう。

私たちは社会のなかで生きているのですから、一人で死を完結することは不可能である以上、誰にも一切、手間をかけずに逝くことは無理です。それならば、自分がどこでどんな風に死を迎えたいかを元気なうちにイメージし、意思を周りの人に託しておくことが必要です。特に没イチの人は、誰にどう託すのか、子供や周りの人と話し合っておくことがとても大切なのです。

「子供がいない私に、夫亡き後も変わらずに家族として接して下さる夫の母や姉には、「これからもよろしくお願いします」の気持ちを込めて、この本を捧げます」(あとがきより)。実際に死別を経験した「没イチ」の人たちがどのように立ち直ったのか、そして自分一人で考える「終活とは」。具体例をベースに、死の研究者ならではのデータが豊富に並べられており、説得力のある一冊だ。

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