ついに「日銀バブル」のツケが回ってくるかもしれない

株価乱高下、銀行の乱脈融資…
藤田 知也

最大の問題は、2%を実現できなかったことではなく、2%の実現が困難だとはっきりした14年時点で、日銀や政府が現実を直視せず、「緩和をもっと強めれば、次こそ2%は実現できる」とかたり続け、無理筋の強行路線を推し進めたことだ。

14年10月の追加緩和で長期国債の買い入れ額を50兆円から80兆円に、ETFは1兆円から3兆円にそれぞれ増やした。そこから日銀の迷走は始まる。円安が再加速し、輸出企業の業績は一段と押し上げられたが、設備投資や個人消費は改善しなかった。それでも日銀は懲りることなく、16年1月にマイナス金利政策を導入し、16年7月にはETF購入量を年6兆円ペースまで加速させた。

 

国債買い入れはさすがに限界に近づき、16年9月の政策修正で購入量を減らす方向にカジを切ったが、ETFを年6兆円も”爆買い”する方針は元には戻せていない。

大量のETFを買うことは、東証1部の幅広い銘柄の株式を薄く広く買うのに等しい。世界経済が改善を続けるなか、企業の業績や成長性に関係なく、漫然と株を買いまくって株式市場に介入する中央銀行は、世界の先進国でも他には例がない。中央銀行が株を買い漁って株価浮揚を図る異常性は、誰の目にも明らかだろう。

そんな「おかしな政策」をなぜ日銀は採り続け、しかも漸次的に拡大させてきたのか。

先が思いやられる

筆者が今春まで日銀の担当記者として取材した限り、たとえばETFの買い入れ額を年6兆円にまで倍増させた16年7月の政策決定過程では、政策委員らの言動がいかにも不自然で、政権への配慮や忖度も見え隠れした。少なくとも2%目標の実現は、追加緩和を決める積極的な理由ではなかった(詳細は拙著『日銀バブルが日本を蝕む』)。

表向きの口実は、英国が国民投票でEU(欧州連合)からの離脱を決め、市場が一時的に荒れたことだった。だが、安倍政権が消費増税を先延ばしするため、三重・伊勢志摩で開かれたG7首脳会議で突如「世界経済に危機が迫っている」と言い出し、さらなる経済対策の大風呂敷を広げたことに付き合わざるを得なかったというのが真相の一つだろう。

危機は訪れず、英国のEU離脱決定にともなう市場の混乱も限定的だった。その後は株高が進み、企業業績も過去最高を更新した。普通に考えれば、増やしたETF購入量はもとに戻すのがスジだ。

しかし、株の爆買いを決めた根拠が失われると、黒田総裁は「(6兆円は)2%のために必要な政策だ」と言い出し、物価が上がらないうちは減額する必要性がないことを強調するようになった。

たしかに日銀総裁が買い入れを減らしたり、やめたりすると口にするだけでも、市場に小さくないショックを与えかねない。要は「怖くて減らせない」だけだとみられるが、好況とされる間も買い入れを減らすことさえできないようでは、これから先が思いやられる。