ドイツのとある選挙から「メルケル帝国崩壊」の足音が聞こえてきた

国民政党の消滅に胸が騒ぐのはなぜか

バイエルン州の異変

10月14日、バイエルン州の州議会選挙が終わった。

バイエルンは、これまでCSU(キリスト教社会同盟)が一党独裁を誇ってきた州だ。CSUというのは、メルケル首相の党であるCDU(キリスト教民主同盟)の姉妹党。この二党がまとまって統一会派となっている。

バイエルン州は非常に特色のある土地で、これまでは保守の牙城だった。ここにはCSUだけで、CDUはない。CSUは、CDUよりも保守色が強く、現在のドイツ連邦政府では、そのCDU/CSUが一緒になって、社民党(SPD)と連立を組んでいる。

そのCSUが、今回の選挙では10ポイント以上も票を減らし、37%しか獲得できなかった。一応、第1党ではあるが、単独ではもう政権を取れない。

ところが、CSUの落ち込みを利用できなかったどころか、さらに落ち込んだのが社民党だ。こちらは10ポイント以上下げ、得票率は10%を切った。前回の選挙に比べると、議席数は半減。まさに壊滅状態である。

 

社民党は、ヴィリー・ブラントやヘルムート・シュミット、最近ではゲアハルト・シュレーダーといった首相を輩出した伝統的な政党で、今あるドイツの政党の中では一番古い。かつてはCDUと並んで、国民政党と呼ばれていた。

ドイツの戦後の政治は、この二つの国民政党がうまくバランスを取り、交互に政権を担いながら発展してきた。それが、今、両方とも国民の信頼を失いつつある。

〔PHOTO〕gettyimages

このたびのバイエルン州選挙では、かつての国民政党の代わりに躍進したのが緑の党だ。緑の党は9ポイントも票を伸ばし、堂々17.5%の得票率で第2党に躍り出た。

バイエルン州では、これまでも大都会ミュンヘンなどではリベラルが強かったが、その周りに広がる広大な農村地帯は、手堅い保守陣営だった。それが今回は、地方でも緑の党が急伸したのである。

そのほかに伸びたのが、「自由な有権者(Freie Wähler)」というバイエルン地方に特化した地方政党とAfD(ドイツのための選択肢)で、得票率はそれぞれ11.6%と10.2%。

AfDは2013年にできた新党で、極右、ポピュリスト、それどころかナチとまで言われ、他政党とメディアから、ありとあらゆる手段を使って攻撃され続けている。しかし、最近の選挙結果を見ていると、攻撃を物ともせず、順調に市民権を得てきたように感じる。

このほか、5%条項をぎりぎりでパスした自民党(FDP)も議席を得た。左派党は得票率3.2%で脱落。いずれにしても、CSU以外は、5党がどんぐりの背比べのように並んでおり、小党乱立状態である。

そして、これは、中央の政治状況とまったく同じ。去年の連邦議会の総選挙のあと、小党乱立のベルリンでは、メルケル首相は半年近く組閣ができなかったという経緯がある。

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