神は存在するのか? ホーキング博士が遺作でも強調した「答え」

かつてキリスト教信者から批判され…
岡本 亮輔 プロフィール

「神は完全にギャンブラー」

近代科学を基礎づけたアイザック・ニュートン(1643〜1727)は、晩年、オカルト的な聖書研究をしていた。自らが確立した天文学を聖書研究に応用したのだ。今から見ればまったく非科学的なものだ。

だが、そもそもニュートンが万有引力の法則をはじめとする研究を行なった根本的な動機も、神が創り出した世界の秘密を解き明かすことだ。

世界は万能の神が創り出したのであるから、それを支配する法則は美しい数式で書き表せるはずであり、それを見つけるのが当時の科学者(自然哲学者)の仕事だったのである。

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その後も科学は発展し続け、神の助けを借りることなく、ますます世界の多くの部分を説明できるようになった。

それでも、1960年代には、科学者の多くですら、「宇宙に始まりがある」という考えには反対していたという。宇宙創成の瞬間には科学は通用しないと思われていたのだ。当時は、科学者の中にも、どのようにして宇宙が始まったのかは神に委ねる人もいたのである。

「神はサイコロを振らない」という言葉の通り、アインシュタインですら世界が偶然に支配されているという見解に反対していた。だが、ホーキング博士によれば、「神は完全にギャンブラー」であり、「宇宙は常にサイコロが転がる巨大カジノ」なのである。

神の不在と世界の偶然を断言するホーキング博士の態度は、ニュートン以来の極めて正統的な科学者のものだと言ってよい。神を攻撃したくて宇宙を研究していたわけではなく、研究の結果、神がいないことが疑いようのない事実として科学的に証明されたのだ。

 

博士が長年務めたポストであるルーカス教授職はケンブリッジ大学で最も名誉あるものの1つだが、その2代目を務めたのがニュートンだ。

そしてニュートンの時代よりもはるかに発達した科学に基づいて、博士は極めて明快に世界に意味がないことを断言し、一部のキリスト教徒からの批判も招いたが、それも科学者の大切な役割だ。

博士の遺灰は、ロンドンのウェストミンスター寺院の中で、ニュートンをはじめとする科学者たちの墓のそばに埋葬されている。