2018.10.21
# スクールカースト # アメリカ

カバノー最高裁判事の性暴力疑惑に見る「米国のスクールカースト」

「イヤーブック」が写す光と陰
吉原 真里 プロフィール

名門男子高文化における飲酒と性

今回の事件において問題となったのは、高校のイヤーブックにカバノー氏が自ら書いたプロフィールである。

カバノー氏は、彼が所属していたスポーツチームのリストに続いて、学校生活の思い出や仲間に向けたメッセージを、半ば暗号のような表現で羅列している。

そのなかで、Keg City Club(kegとはビア樽のこと)の会計係であったことや、卒業までに100樽をクリアするとの宣言が記述されていることから、高校時代からカバノー氏が相当量の飲酒をしていたことがうかがわれる。

女性たちが告発した性的暴行も飲酒時の出来事であり、公聴会でも彼の飲酒癖が再度取り上げられた(質問を受けて、カバノー氏は、当時は州の飲酒年齢が18であり、高校3年生の彼が飲むのは合法であったこと、ビールが好きであることを再度繰り返しながら、酔って記憶を失ったことや暴行をはたらいたことはないと主張した)。

カバノー氏のプロフィール文でさらに問題となったのが、Renate Alumnusという記述である。同じイヤーブックには、Renate Alumnusというキャプション付きの9人のフットボール選手の集合写真も掲載されており、イヤーブック全体で計13人の卒業生が何らかの形でRenateという名前を挙げている。

ニューヨーク・タイムズの取材により、Renateとは近郊のカトリック女子高の生徒であったレナタ・シュレーダー・ドルフィン氏を指すことが判明した。Alumnusとは卒業生の意である。つまり、Renate Alumnusは、「レナタを卒業したヤツら」とでも訳せようか。

カバノー氏のイヤーブック。Renate Alumnusなどの表現が見受けられる

Renate Alumnusという表現の意味を問われたカバノー氏は、ドルフィン氏と高校時代にデートに出かけたり一緒にダンスパーティに行ったりしたことを指したもので、それ以上の意味はない、と主張している。

しかし、アメリカの高校生、とくにカバノー氏が通った名門私立校において、デートやダンスパーティは日常生活の一部である。それを多数の男子学生が具体的な相手の名前を挙げてわざわざイヤーブックに自慢げに記載する、という説明はあまり信憑性がない。これはドルフィン氏と性的関係をもったと吹聴する記述である、という解釈が、公聴会で質問した議員たちの間でもメディア報道でも一般的であった。

 

高校時代のカバノー氏と交友関係のあった他の64人の女性たちが 、彼がリスペクトをもって女性に接するきちんとした人物であった、という主旨の手紙を連名で上院司法委員会に送った際、このイヤーブックの記述について知らなかったドルフィン氏もそこに名前を連ねていた。数日後に記述を知ったドルフィン氏は、困惑するとともに、その意味合いに深く傷ついている、との意を発表している。

このような記述がイヤーブックに存在する、という事実から明らかになるのは、性的経験があること、豊富であることが「一人前の男」の印である、とする名門男子高校の文化である。

性経験のない男子生徒が、周囲からのプレッシャーで、気の弱い女子を相手に無理やりセックスをして、「一人前」と認められる、といったことは、現在でもいろいろな場である。男子高校生たちが、実際にはありもしない性交渉をあったかのように自慢する、という行為も、珍しいことではない。

そうした文化の被害者となるのが、実際にはないことを多数の男子生徒たちに吹聴され、尻軽女であったかのような記述があとあとまで残ってしまうドルフィン氏や、実際の性暴力の被害を訴えながらも、証拠不十分とされたままになるブラゼイ氏のような女性である。

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