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同性両親のDNAを受け継ぐマウスはどうやって生まれたか

中国科学院の研究チームがゲノム編集で

同性の両親からDNA(遺伝情報)を受け継いだマウスを誕生させることに、中国科学院などの研究チームが成功した。これがすぐに人間に応用されることはないが、今後の社会が進む方向性と、それに伴う社会的論争の予兆として注目されている。

https://www.cell.com/cell-stem-cell/fulltext/S1934-5909(18)30441-7

今月11日に発表された上記論文によれば、研究チームは雌の(生物学的)両親を持つ子マウスを29匹、雄の両親を持つ子マウスを12匹誕生させた。このうち前者は大人へと成長し、自身も(通常の交尾を経て)子マウスを作ることができた。しかし後者は誕生後、数日で死亡したという。

これまで自然界では「コモドオオトカゲ」のような爬虫類や「ゼブラフィッシュ」「シュモクザメ」など魚類、あるいは「サラマンダー」のような両生類では、雌だけで単為生殖するケースが何度か報告されている。

これら生物(の雌)では、ある種、外界から隔離された状況に陥ると、やむを得ない手段として単為生殖に頼るようだ。しかし、より高等な哺乳類では皆無である。

一方、雄による単為生殖となると、さらに稀で、(冒頭の論文によれば)これまでのところ1996年にゼブラフィッシュで一件だけ報告されているが、やはり哺乳類では皆無という。

つまり同性マウスから子供を誕生させる今回の研究は、自然の摂理に徹底的な挑戦を試みた実験と見ることもできる。

 

通常の遺伝子に性差はない

同研究(実験)のポイントとなったのは「遺伝情報の刷り込み(genome imprinting)」と呼ばれる現象だ。

通常、マウスのような哺乳類は父親(雄)と母親(雌)から、各々のDNA(染色体)を受け継いで誕生する。これらDNAは、細胞の核内にペア(対)として存在する(このようにペアのDNAを持つ生物は、一般に「二倍体」と呼ばれる)。

これら対をなす染色体の内部には数万種類に及ぶ遺伝子が含まれているが、これら遺伝子も父親由来と母親由来のペアとして存在する。これらは「対立遺伝子(allele)」と呼ばれる(図1)。そのどちらが発現、つまり機能するかは基本的に偶然に委ねられる。

図1)ペアをなす染色体上の対立遺伝子(allele) 
出典:https://socratic.org/questions/how-are-the-terms-gene-locus-and-allele-related

たとえば遺伝子Aの場合では父親由来のalleleが発現し、遺伝子Bの場合では母親由来のalleleが発現する、といった具合だ。これら片親だけから発現する遺伝子は、一般に「優性(顕性)遺伝子」と呼ばれる。

逆に「劣性(潜性)遺伝子」の場合は両親の双方に備わっていなければ発現しないが、それも偶然に委ねられる点では同じだ。

優性、劣性、いずれの場合でも、生物の生殖にとって好都合な点は、仮に父親、あるいは母親由来の遺伝子(allele)が異常を来たして機能不全に陥っても、もう片方の遺伝子がバックアップ機能を果たしてくれることだ。

つまり父親由来の遺伝子がダメなら母親由来の遺伝子が代わりの役目を果たしてくれるし、その逆も然りだ。通常の遺伝子では、この点で性差が存在しないのである。

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