「起業」が正解か、「会社を買う」のが正解か…二人の経営者の答え

『ダメ億』『サラ3』特別対談
成井五久実, 三戸 政和

自分の「市場価値」に気づいた瞬間

三戸 偶然の体験を通じて、自分の市場価値に気づいた、ということですね。その時に、それを「副業にする」という選択肢もあったけれど、成井さんはもともとが起業志向だったから、起業することを決めた、と。

これ、仕事とは何か、報酬とは何か、さらには会社とは何かを考えるうえでとても重要な話です。自分が持っている能力とか経験とか知識とかが、いくらで売れるのかを知れば、副業はもちろん、事業を興すアイデアも思い浮かぶんですよね。

よく「副業をしたいんだけれど、何をすればいいか分からない」という話を聞くんですが、成井さんのいまの話は、「副業のマニュアル」でもある。自分がこれまでやってきたことを抽出して「こんなことができます」とリストにして、知り合いの社長・部長クラスの人に「私、こんなことができるんですが、月〇万円で仕事させてもらえませんか」と言って回ってみればいい。そこから自分に最もふさわしい副業が生まれるはずなんですよ。

三戸政和氏

たとえばいつも取引先を回る営業職の人なら、別の会社からウォーターサーバーの営業販売も引き受けて、普段の営業トークが終わった後に、「実は私、ウォーターサーバーも扱っていまして、御社でも一つどうですか?」と営業すればいいんです。それで月5万円とか10万円とかもらうことは不可能ではないですから。

みと・まさかず 株式会社日本創生投資代表取締役CEO。1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先にてM&A戦略、株式公開支援などを行う。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている

成井 はい。もちろん副業という選択肢もあったと思いますが、さっきお話した通り、自分が本業で立てている売上のことも考えると、これは起業したほうがいいよね、と(笑)。

 

三戸 いうまでもなく起業は副業の何十倍も難しいんですが、改めて、なぜ成井さんの起業はうまくいったと分析していますか?

成井 そうですね。まず、起業をする上で、自分の強みと得意なことを見極めたうえで、「いま、お金の集まりやすい事業はなにか」を考え抜いた点が良かったんだと思います。

私はトレンダーズで消費者やメディアに向けて情報発信をする業務を行っていたので、「発信」「拡散」が強みの一つでした。その強みを生かすために、なにか新しいメディアを作りたいなと思っていました。ちょうど新興メディアがいくつも立ち上がって、盛り上がっている時代だったので。そこで、「女性ライターが女性の本音を男性に届けるメディア」を作ろうと決めて、「JION」というサイトを立ち上げたんです。

仕事柄、ウェブメディアの運営に慣れた友人が周りにたくさんいたという幸運にも恵まれていたので、立ち上げから1年で、月間の読者が200万人を超えるメディアに成長しまして。

三戸 絵に描いたようなサクセスストーリーですよね。いきなりメディアを立ち上げて、それがうまくいくって、実はとても困難なことです。最初に1000万円とか2000万円の資金調達を行っても、その後、1~2年で資金がショートしましたという事例は、私も何度も見てきたので。

普通なら、まずは月に数十万円は稼げる下請け仕事をいくつか引き受けるとか、小さな「ヒット事業」を何本か育てて、自分とウェブ開発者の給料は払えるぐらいの体制になってから大きな事業を手掛けていく、というのが一般的だと思うんですが、成井さんの場合はいきなりホームランを狙っていったと。