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死を意識した時に、有名人とその家族がとった「苦渋の選択」

中途半端がいちばん後悔する

息子の肝臓をもらってでも

「治療はもういい。決められた寿命が来たんだ。人間はだれでも、いずれ順番がやって来るものだからしょうがない」――。

『必殺シリーズ』や『ザ・ガードマン』など数々のドラマで脇役を演じた入川保則さんは、生前こう家族に語っていた('11年に死去・享年72)。

入川さんは、3度の離婚歴があり、2度目の妻との間に娘が2人、3度目の妻となった女優のホーン・ユキさんとの間には3人の息子がいる。'04年にホーンさんと離婚後は一人で暮らしていた。

長男の鈴木正則さん(37歳)が話す。

「もともと脱腸の手術で入院したところ、直腸にがんが見つかりました。一度は手術で切除したのですが、半年後、検診に行ったらステージⅣまで進行していたのです。

担当医の先生からは『まだ手術すれば50%の確率で助かる』と言われたので、家族としては手術してほしい気持ちもありました。でも、父は一度決めたら譲らない人でしたから……」

 

入川さんが無治療を選んだ理由は、役者という仕事への思いだった。「全身がん」のため、先日亡くなった樹木希林さんと同じく、最期まで演じることにこだわった。

「父は常々『役者を続けられなくなったら、自分の寿命はそこまで』と口にしていました。実際、亡くなる直前まで、映画の撮影も行っていました。

もし手術や抗がん剤をしていれば、少しは寿命が延びたかもしれません。ただ、役者は諦めざるを得なかったでしょう。

父は死ぬことより、役者の仕事ができなくなることのほうが怖かったのかもしれません。あとは子供たちに迷惑をかけたくないと思っていたみたいです」

入川さんは、生前に葬儀の準備も自分で行い、親しい人とのお別れ会も済ませていたという。

「最期は入院しましたが、痛み止めの処置だけを行って、安らかに眠るように逝きました。自分のやりたいことを全部やって亡くなった。本当に幸せな人生だったと思います」