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検査したのに、がんが見逃されて亡くなってしまった人たち

大病院でも安心できない 

3度も見落とされて死亡

「大事なのは、やはりどうやったら、がんの見落としを防げるかという視点です。実際に見落としが起きて、患者さんが亡くなってしまった。その後、病院側と裁判で戦って勝てるかというと、非常に厳しいのが現状なのです」

そう話すのは、医学博士であり、医療過誤事件などが専門の石黒麻利子弁護士。前章では、検査をしても、分からないことがあることを見てきた。

しかし、たとえ検査をしても、人為的なミスで見落とされるというケースもあり、それで亡くなってしまっている人たちも数多くいる。

7月に東京・杉並にある河北健診クリニックが、40代の女性の肺がんを3度にわたって見逃していたことが発覚した。

同クリニックは杉並区から区民健診を委託されている。女性は'05年から複数回、同クリニックで区民健診などを受けていた。胸部X線検査で肺がんと見られる影が写っていたにもかかわらず、3回にわたって見落とされていた。女性は今年6月に死亡した。

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8月末には北九州市立医療センターで、60代の男性患者の肺がんを見落としていたことがわかった。この男性は、'15年4月に糖尿病の治療のために同センターを訪れていた。担当の北九州市病院局総務課の話。

「'15年4月に患者さんが同病院の糖尿病内科を受診されました。その時、胸部のX線検査をしたのですが、右の肺に腫瘤影が確認されました。そのため、糖尿病内科の医師が電子カルテ上でCT検査をオーダーしました。

それで、CT検査を実施し、放射線科の医師が、影が認められたことと、さらなる精密検査を求める『画像診断報告書』を作成。電子カルテ上で送信しています。しかし、その報告書を糖尿病内科の医師が確認するのを怠っていたのです」

男性はその後、身体の不調を訴え、'16年3月に改めてCT検査を受けた。そこで、ようやく肺がんだと判明したが、同年10月に死亡している。偶然発見できるチャンスをみすみす奪われたのだ。

 

そもそも胸部X線検査は、がんの早期発見には限界がある。『日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』の著者である、近藤慎太郎医師が話す。

「胸部X線検査は、心臓など他の臓器と重なって見えにくい部分があり、そういった盲点のような場所にがんができると、発見するのが難しい。特に肺門部という部分は死角になりやすいです」

撮影範囲に限界があるX線検査で、せっかくがんの影を捉えられたのに、医師がそれを見落とす、あるいは報告書を見ていないという、にわかに信じがたい事態も起きている。