「名義変更は妻が進んでしたこと」!?

これに対し、元夫側(代理人弁護士)は、「準備書面」で、こんな主張をしてきた。「名義の変更は、あなたが自ら進んでしたことなので、返還する義務はない」。

驚愕した。なんという嘘をつくのだ。公の文書で、平然と。

わたしは、つい先日まで名義の移転や預金の払い戻しの事実を知らなかった。法務局や銀行で調べて初めてその事実を知った。だからこそ、「どういうことか」と元夫に問い合わせたのだ。

もしも、準備書面で言うように「わたしが自らすすんでしたこと」なのであれば、わたしがそれを訊ねたときに、すぐにそう答えればよかったはず。そもそも、離婚して貧乏暮らしになるわたしが、自ら手持ちの財産を差し出すわけはない。裁判を起こされて、慌ててでっち上げたとしか思えないツッコミどころ満載の「準備書面」だったが、裁判官がこの話を信じれば裁判は負けてしまう

わたしの代理人弁護士から、メールで送られてきたこの「準備書面」を読んだのは、取材で遠く郊外へ出かけた先の、冷たい風が吹き荒ぶ駅ホーム。寒さと心細さとで、足が震えた。

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裁判官が「えーと、何でしたっけ」

たいていの人がそうだと思うが、これまで生きてきた50年間、「裁判」などとは無縁だった。推理小説やドラマでだけしか知らない裁判と現実のそれは、かなりイメージが違っていた。

まず、想像以上に進行が遅い。訴状を提出したのが11月、第一回の口頭弁論期日が年を越して2月。その後、交互に主張を出し合うが、その間が1〜2か月以上と長いのだ。双方の言い分が出揃うまでに、1年かかることも珍しくないという。

次に、裁判官の対応が軽すぎる。こちらには人生の一大事だが、裁判官にとっては日常茶飯事、それはわかる。しかし、こちらの出した書類をろくに読みもせず裁判に臨むのは、いかがなものか。わたしの事件の担当は若くてきれいな女性裁判官だったが、席に着くなり「えーと、何でしたっけ?」と呟いて、わたしをがっかりさせた。

弁護士が話してくれたところによると、一般的に裁判官は常に数十件の事件を抱えており、一つひとつにていねいに向き合う余裕がないのだそうだ。とくに若い裁判官は経験を積むため、小さな事件をたくさん担当させられている。「わかっちゃいない」裁判官の態度には、なるほどと合点がいったが、裁判の場こそ正義がおこなわれると思っていただけにショックだった。