女性弁護士2人にけんもほろろ……

実は、彼に依頼する前に2人の弁護士を訪ねていた。1人は、マスコミで「女性の味方」として有名な弁護士。もう1人は、人伝てに評判を聞いた人権派の弁護士。どちらも女性である。女性なら、元夫の言葉を信じて騙されたわたしの無念をわかってくれるのではないかと思った。

結論からいうと、2人ともけんもほろろな対応だった。「公正証書に判を捺しちゃったの? じゃ、無理ですね」「あなたのしたこともほめられたことじゃないしね」「DVがあったなら、離婚前に相談してくれればよかったのに」。たしかにそうかもしれないが、元夫のだまし討ちに弱った心には、きびしすぎる言葉だった。帰り道、疲れた足を休めるために腰かけた公園のベンチで、子どものように泣いた。

「無理ですね」「あなたのしたこともほめられたものではない」…一理あるのだろうが、女性弁護士たちの強い言葉のとげは、とても太く突き刺さった Photo by iStock

よくわかった。これが世間の言葉なのだ。どんな理由があろうとも、結婚していながら好きな人ができた女は糾弾されるのだ。自分の人生を生きるため、恵まれた暮らしを打ち捨てた女は「馬鹿正直だ」と嘲笑されるのだ。でも、本当にそうなのか? 自分を偽ってでも、お得で賢い人生を送れば、死に際に「満足だった」と言えるのか? 

いや、違う。わたしは一度しかない人生を精いっぱい生きたかった。だから、元夫にも、子どもにも、自分にも、わたしなりの誠意を尽くした。それが愚かだというなら、いえばいい。開き直ったわたしは、もう一度、気持ちを奮い立たせた。

-AD-

弁護士の「闘いましょう」の意味

そんな経緯があったから、なおさら彼の「闘いましょう」という言葉はありがたかった。気づけば彼は、いつの間にか元夫の下の名前を、吐き捨てるように呼び捨てしていた。そう、彼はわたし以上に元夫の「不法行為」を怒っているのだった。わたしの味方としてというより、正義の味方としてだと思う。

いま、日本における離婚の9割近くは、夫婦の間で相談がまとまり、離婚届を出して終了する「協議離婚」である。合意ができない場合に、家庭裁判所に調停を申し立て、それが不調に終わった場合は離婚訴訟に進む。

つまり、離婚にまつわるお金の問題は、一般的には家庭裁判所に調停を申し立てることになる。民法768条1項には「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求できる」とあり、それを根拠して、財産分与を主張できる。離婚後であっても、2項ただし書きに「離婚の成立から2年以内なら、財産分与の請求ができる」とある。ちなみに平成28年、家庭裁判所への「財産分与」の申し立ては3265件平成19年の1729件に比べ、2倍近くに増えた。 

しかし、わたしの弁護士は、家事事件としてではなく、「持分全部移転登記手続等請求事件」として地方裁判所に申し立てた。公正証書に「財産分与はしない」と明記してあること(これについてはわたしも異存はなかった)、また今回問題にしたいのは元夫の不法行為であることが理由だろう。 

「訴状」に記した請求趣旨は、主に「無断で変更した不動産名義を返還せよ」「無断で払い戻しを受けた預金を変換せよ」の2点である。