「妊娠中絶は殺し屋を雇うのと同じ」…ローマ法王“過激発言”の波紋

急激に教会離れが進む中で
岡本 亮輔 プロフィール

変革が難しい理由

実際、今回のフランシスコ教皇の中絶非難発言も、背景には、今年の夏、アルゼンチンでの妊娠中絶合法化法案の提出があると思われる。結果的には否決されたが、国民の大半がカトリック信者で、さらに現教皇の出身国で中絶合法化の動きが出たのである。

中絶が非合法のままだと、富裕層は海外で手術を受けることができるが、そうでない人々は医者ではない施術者による危険な処置や非合法の薬に頼るしかなくなる。カトリック教会もこうした状況を認識しているはずだ。

 

とはいえ、カトリックの価値観の保守性を批判するだけは不十分だ。カトリックも自らと現代社会の齟齬には十分に自覚的だ。だが、カテキズムに見られる倫理観や価値観を修正するのは容易ではない。

それらは長い時間をかけて受け継がれ、緻密に整備されてきた。そして、こうした倫理の法体系があるからこそ、カトリックは時代と国境を越えて存続してきた。体系化された教理があるからこそ、カトリックは、いつでもどこでも首尾一貫した教えを説くことができたのである。

しかし、現代では、この修正の難しい倫理体系が足かせになり、多様性に対応できなくなっている。単にカトリックが保守的なだけでなく、その長い歴史、世界中に広がる組織性がその変革を難しくしているのである。