「妊娠中絶は殺し屋を雇うのと同じ」…ローマ法王“過激発言”の波紋

急激に教会離れが進む中で
岡本 亮輔 プロフィール

ローマ教皇の権力は絶大だ。西欧で教会離れが進むとはいえ、世界最大の宗教集団のトップであり、同時にカトリック聖職者からなるバチカン市国の元首でもある。

だが、それでは教皇の一存で何もかも決まるかといえば、まったくそうではない。バチカンには枢機卿と呼ばれる教皇につぐ高位聖職者が120名程度いる。

枢機卿たちはまったく背景の異なる各国のカトリックを代表してバチカンに赴任しており、その意見調整だけでも大変だろう。教皇は枢機卿の互選によって選出されるが、その選挙コンクラーベが一筋縄ではいかないことがそれを示している。フランシスコ選出の際も、3分の2の票数を獲得するまで5回の投票が繰り返された。

しかし、教皇を縛るのは枢機卿だけではない。それよりも大きいのは千年以上にわたって受け継がれてきた信仰とそれにともなう倫理観だ。

さらに、日本の神道や仏教からはイメージしにくいが、カトリックでは、それが長い時間をかけて法律のように整備されてきたのである。

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カテキズムに書かれていること

それを手っ取り早く知ることができるのがカテキズム(教理)である。

カテキズムとは、カトリックの教えをわかりやすく解説したものだ。信者になりたい人のための教育などで用いられるいわば教則本だ。原文はラテン語だが、日本でも『カトリック教会のカテキズム』として翻訳出版されている。

教則本とはいえ、カテキズムは800ページを超える大著だ。全体は4部に大きく分けられており、第3編「キリストと一致して生きる」でカトリック信者の行動原理が示される。

 

たとえば結婚については、「家族に関する神の計画」として次のように述べられる。

「夫婦共同体は配偶者の同意の上に成立しています。結婚および家族というものは、夫婦の幸せや子供の出産と教育とを目指すものです。夫婦愛と子供の出産とによって、同じ家族の成員の間での相互のかかわりや大切な責任感が構築されるのです」

「結婚によって結ばれた男女は、子供たちと一つの家族を作ります。この制度は公権が認める前に存在しており、公権としてはそれを認めざるをえないものなのです。近親関係に関するさまざまな形態というものは、通常は家族を基準として考えられなければなりません」

男女のカップルを夫婦の基礎とし、そのうえで子供を作ることの大切さが説かれている。そして、責任感も子供を通じて育まれるというのである。