〔PHOTO〕gettyimages

「妊娠中絶は殺し屋を雇うのと同じ」…ローマ法王“過激発言”の波紋

急激に教会離れが進む中で

児童虐待、同性愛、妊娠中絶への批判

カトリックのフランシスコ教皇の発言が批判を浴びている。

今月10日、毎週開催されるサン・ピエトロ広場での一般謁見の際、人工妊娠中絶を非難したのだ。しかも、中絶は「ヒットマンを雇う」のと同じことだという強烈な表現が含まれていた。演説の予定稿にはなかった発言であることも波紋を呼んでいる。

聖職者の児童虐待、同性愛の批判などと同じく、妊娠中絶はカトリック教会が抱え込む難題のひとつだ。

カトリックは、長い間、ヨーロッパをはじめとする社会の歴史文化に絶大な影響を及ぼしてきた。だが、長い歴史が重荷になってきている。古くから受け継がれてきたカトリックの倫理観と現代社会の倫理観がそぐわなくなっているのだ。

実際、20世紀後半以降、ヨーロッパを中心に「世俗化」と呼ばれる教会離れが指摘されている。

カトリックでは毎週日曜日に教会の礼拝に参加するのが信者の基本的な務めとされるが、この教会出席者が激減している。英国やフランスでは10パーセントを下回り、出席者の高齢化も進み、あと数十年すれば、教会出席者はほとんどいなくなるとも言われている。

こうした教会離れの背景に、カトリックの倫理観があることは否めない。

 

それでは、より具体的にはカトリックの倫理観や教えとはどのようなものなのか。日本にはカトリック信者が少ないこともあり、意外に知られていない。カテキズムと呼ばれる本をもとにカトリックの組織と倫理体系について見てみよう。

その前に、フランシスコ教皇の位置付けについて簡単に確認しておこう。

以前も本欄で述べたが(「日本人が実感しづらい『ローマ教皇』絶大なる影響力と苦悩」)、フランシスコはリベラルな考え方の教皇として期待されていた。

少し振り返ってみると、先先代のヨハネ・パウロ2世(在位1978〜2005年)は20世紀中では最年少の58歳で教皇になった。その若さは新鮮であり、世界中を精力的に訪問し、「空飛ぶ教皇」として民衆から愛された。

ヨハネ・パウロ2世〔PHOTO〕gettyimages

その次のベネディクト16世(在位2005〜2013年)は、ヨハネ・パウロ2世に対して、ドイツ出身のいかにも神学者風の堅物感があった。かつては異端審問を担った教理省長官を務め、教皇着座も78歳であった。そして避妊、中絶、同性愛についても断固反対の立場をつらぬいた。

高齢を理由とするベネディクト16世の生前退位をうけ、下馬評をくつがえし、教皇に選出されたのがフランシスコである。

アルゼンチンという初のアメリカ大陸出身の教皇だ。さらに若い頃から現場レベルで貧困問題に熱心に取り組み、またサッカー好きを表に出すなどし、着座当初はヨハネ・パウロ2世に匹敵する人気ぶりだった。