韓流アイドルBTS(防弾少年団)に熱狂する、アメリカ社会の激変

快進撃が止まらない
川崎 大助 プロフィール

そして、だからこそこれは、本当に「とんでもない」ことが起きている証左だ、と僕は言い切れる。

なぜならば、かつてのアメリカ人は「なにがなんでも」英語の歌しか聴かなかったからだ。

非英語の歌がヒットすることは、原則「ナシナシ」と言うほかないほどレアな出来事で、たとえばシングル・チャートであるビルボード・トップ100において、1位を獲得した「非英語の歌」は、なんと、集計が始まってから今日までのあいだに、たったの7曲しかない(ちなみに、63年にその栄えある1曲となったのが、日本の坂本九の「上を向いて歩こう」だった)。

これほどまでに「英語だけ」がショウビズ界を完全支配する国のど真ん中で、韓国語の意味はわからないけれど「BTSがかっこいいから、それはOK!」ということになってしまった、わけだ。

久松茂さんの娘さんも、韓国語はわからないにもかかわらず「なんとなく、聞こえたまま」曲に合わせて歌ったりしているそうだ。MGMグランド・ガーデン・アリーナを狂熱の坩堝としたあのARMYたちよろしく……。

 

「今様ビートルズ」と呼ぶしかない

つまり、アメリカは「変わり始めて」いる。

いや、BTSやARMYたちの動きによって、地響きを立てて「変えられ始めて」いる、と言ったほうが妥当かもしれない。

なにもかも揃っている(はずの)広大な城のなかでそっくりかえっている、世界の中心にいる(はずの)、往々にして「傲岸不遜」と評されることが当たり前の、旧来型のアメリカ人とは「明らかに違う」――そんな若い層が、生まれ始めているのかもしれない。

そのなかの女子層が「好きになる」対象として、天から舞い降りてきたのがBTSの7人だった、のかもしれない。

つまり、そこには「あらかじめ欠落があった」ということだ。この「欠落部分」について、後編ではさらに詳しく見ていきたい。

本稿の最後に、現在BTSがおこなっているワールド・ツアーについても触れておこう。

11月には日本でもスタジアム・ライヴをおこなうのだが、9月に始まった全米公演は、それどころではなかった。全15会場すべて完売(数分で売り切れの場所も多数)。

皮切りは、グラミー賞の授賞式会場としても有名なロサンゼルスのステイプルズ・センター。ここをなんと「4日間連続(!)」で使用して8万4000人を動員。

このハコで4連チャン以上やれるのは、ブルース・スプリングスティーン、マドンナ、テイラー・スウィフト、アデル(は8日を達成)といった「地上最強」部類のアーティストのみだ。

BTSは、もうそこに到達している。そして米ツアーの楽日はニューヨークのスタジアム、シティ・フィールドで一発4万人動員!なのだから、豪儀と言うほかない。

ちなみにこのシティ・フィールド、MLBはニューヨーク・メッツの本拠地であることはもちろん、かつては「シェイ・スタジアム」との名で親しまれていた球場の後継として、同じ公園内に建設されたもの。

シティ・フィールド(photo by iStock)

そして言うまでもなく、シェイ・スタジアムとは、ビートルズが1965年の全米ツアーのオープニングとして使用した場所だ。

「ビートルマニア」という名の、絶叫する若い女性の歓声を、映像とともにご記憶のかたも多いだろう。

ときは流れて、「あのときの熱狂」を今日のBTSが引き受けた、といった構図が浮かぶ。BTSはロック・バンドではないが、「今様ビートルズ」と呼ぶしかないほどの衝撃的人気を、すでにアメリカで獲得してしまったと見るべきかもしれない。

〈後編〉へ続く!

※注 「ボーイ・バンド」
Boy band あるいは Boyband と記す。BTSや、すこし前に世界を席巻したイギリス発のワン・ダイレクションのような「歌って踊る」男性グループを指す英語の言葉だ。同様の女性集団の場合は「ガール・グループ(Girl Group)」となる。
日本の人が言う「ボーイズ・グループ」や「ガールズ・グループ」というカタカナ語は、英語としてあり得ないのでいますぐ使用をやめるべきだ(ガールズ・バンドやガールズ・コレクションそのほかの用法も、すべて同じ)。
Band や Group といった英単語の前に「名詞の複数形」が来ることは原則ない。「絶対に」Books Store や Records Collection と言わないのと同じ(この場合、Book、Recordと単数でなければならない)。
逆に「×× Books」だけで「××書店」という意味になるのはご存知のとおり。「壊れた英語」もどきのカタカナ語に支配されているかぎり、その人の言語能力は、当たり前のまともな英語から遠ざかるばかりとなるから、注意が必要だ。

川崎氏が日本のロック名盤を選び抜いた!

川崎氏は現在、「究極の洋楽名盤ROCK100」(光文社ウェブサイト〈本がすき。〉)を連載中