ソフトバンク、トヨタ、武田…高まる企業の「ベンチャー投資」リスク

「ユニコーン」と「天使」の危うい関係
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

ベンチャーキャピタル化する事業会社

しかし、普通はうまくいかないはずのベンチャー投資を、今や多くの企業がやっている。事業会社が「エンジェル」やVCファンドとなる 「コーポレートVC(CVC)」だ。同じNVCAによれば、昨年はベンチャー投資の半分がCVC投資だった。

CVCのアクティブプレーヤーの上位には「インテルキャピタル」、グーグルの「GV(旧グーグルベンチャーズ)」や「クアルコムベンチャー」などのテクノロジー企業がつらなる。企業ベンチャーといっても、運用者はVCのプロであることが多い。

今や日本でもソフトバンクだけではなく、あらゆる業種でCVCが活発だ。ドコモやKDDI、電通、武田薬品工業の「武田ベンチャー」やトヨタの「AIベンチャーズ」など、CVCのニュースがひきもきらない。

トヨタ AIベンチャーズのJim Adler氏

企業に余剰資金があるのも要因の一つだが、プロダクトサイクルが短くなっている今の時代、破壊的(ディスラプティブ)な新技術に対するリスクヘッジとしてCVC投資を行う企業も多い。

ただし、企業のベンチャー投資は、時として大きなリスク要因となる。

2000年にITバブルが弾けた時には、米国マイクロソフトは日本円で6000億円以上の投資損を計上した。日本市場でも保有資産価値の急激な縮小により、ソフトバンクの株価が数ヶ月のうちに40分の1、光通信株が60分の1と「つるべ落とし」となった。

企業のVC投資は、連結会社や持分法適用会社としての開示を避けるために2割以下の保有率に抑えられる場合が多い。そのためどういう資産を保有しているのか、外部からは分かりにくい。

 

例えばアップル。6月末時点の開示によれば、現預金を含む短期投資と長期投資を合わせて、投資資産が2400億ドルにも上る。総資産の半分だ。アップルは税金の安いネバダ州に「ブレイバーン・キャピタル」という投資会社を作って、この巨大な資金を運用している。ブレイバーンというりんごの種類の名前をつけたところは、アップルらしいかもしれない。

それにしても、この26兆円超という世界最大のプライベートファンド。「投資会社」なのに、顧客資産を運用する通常の投資運用会社と違ってSEC(米証券取引委員会)への登録や開示義務はない。何に投資をしているのか、りんごの中身はさっぱり分からないのだ。

困るくらいのキャッシュを抱えるアップルには、なぜか1000億ドルの大きな負債がある。エコノミスト誌によると、これはブレイバーンがヘッジファンドのようにレバレッジ(借金のテコ)をかけて資産運用をしているためだという。

レバレッジは投資リターンが負債調達コストを上回って好調な時には利益を増大させるが、下回る時には逆に損失が膨らむから要注意だ。