ソフトバンク、トヨタ、武田…高まる企業の「ベンチャー投資」リスク

「ユニコーン」と「天使」の危うい関係
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

「ユニコーン」を追いかける「エンジェル」

ベンチャー投資のフィーバーぶりを象徴するのが、「ユニコーン」だ。これは、まだ株式公開もしていないのに、私募であるVCファンディングで10億ドル、日本円で1000億円以上で評価される企業のことを指す。

起業にも様々なステージがある。まず「シードステージ」、すなわちまだ紙に書いたアイディアに等しい「種まき」の段階では、最初の投資家から一人当たり250万円から1000万円程度、全体で5000万円から1億5000万円程度を募り、9ヶ月から1年くらいのスタートアップ資金を確保する。

事業の基礎が固まって売上が立ち始めるにつれVCファンドなど機関投資家からの出資が始まり、「アーリーステージ」、「ミドルステージ」、「レイトステージ」などと会社の成長に応じて、シリーズA、B、C、D、などと数回の資金募集が行われる。回を追うごとに調達規模も1、2億円から数億円、10億円からそれ以上と大きくなっていく。

配車サービスのウーバー(Uber)は、「ビジョンファンド 」も投資した「ユニコーン」の代表格だ。創業時のウーバーに2万5000ドルを投資したある個人投資家は、今3億6000万ドル(約400億円)の資産を保有する。ぶっちぎりの「1万倍」リターンだ。

Photo by GettyImages

しかし、メディアで騒がれるこうした大成功は、実は稀である。そもそも滅多に巡り合わないからこそ、「ユニコーン」などというまぼろしの動物の名前がついているのだ。

VCファンドの投資期間は数年から10年にもおよぶ。その間、投資された資金はそのベンチャーが別の企業やファンドに買収されたり、成功裏に株が公開されるなど何らかの「エグジット=出口」が見つかるまで基本的には返ってこない。

すでに利益が出ている成熟企業への投資とは違って、ベンチャー投資のリスクは高い。投資成功率は1割程度で、最初の数年で半数のスタートアップが頓挫すると言われる。「成功率が低い」というより、「普通は失敗する」と言い換えた方が妥当だろう。VCファンドの事業モデルは、1社が大成功して、失敗に終わる残りの投資案件を補ってありあまる利益をもたらすことを期待するものだ。

多くのVCファンドが失敗しても潰れないのは、顧客投資家から運用資金の2%程度をマネージメントフィーとして受け取っているからに過ぎない。

 

では、その「普通は失敗する」ベンチャーに、VCよりも先に、一番最初に投資してくれるのは誰か? それは、「エンジェル」だ。ベンチャー経営者を個人的に知っている支援者の場合が多い

商品さえ出来ていない製造業やまだ顧客のいないサービス業、ウェッブサイトも立ち上がっていないネット企業――、そんな冒険にリスクを顧みず出資してくれるのだから、起業家にとってはエンジェル、天使のように優しく有難い存在というわけだ。

語源を探ると、もともと米国のブロードウェイの演劇のスポンサーのことを「ステージ・エンジェル」と呼んでいたのが、70年代にはベンチャー投資のことを指すようになったのだという。ちなみにブロードウェイのミュージカルは今でも裕福な個人投資家から資金を募っている。

では、「エンジェル」は、どこを探せばいいのか。VCファンドの運用者でもあるアンドリュー・ローマンス氏はベンチャー経営者向けの著書 (The Entrepreneurial Guide to Venture Capital、 日本語未訳)の中で、資金を集めるならまず「感情的な投資家」を狙えと説いている。

「感情的な投資家」は、別名「FFF」とも呼ばれる。エフ・エフ・エフとは、家族(Family)と友人(Friends) とバカなやつ(Fool) の略である。