ソフトバンクの孫正義氏(左)とトヨタの豊田章男氏 Photo by GettyImages

ソフトバンク、トヨタ、武田…高まる企業の「ベンチャー投資」リスク

「ユニコーン」と「天使」の危うい関係
ベンチャー投資が近年また盛り上がりを見せている。本家のベンチャーキャピタルはもちろん、事業会社が主体の「コーポレートVC」も活発で、米国ではグーグルやインテル、日本でもソフトバンクのビジョンファンドが存在感を強くしている。
しかし、このベンチャー投資ブームに死角はないか? 米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が解説する。

ソフトバンクと「ベンチャー」市場の盛況ぶり

生々しいニュースが飛び込んできた。

サウジアラビア政府を批判したジャーナリストが、トルコのサウジ総領事館の中で殺害されたという事件だ。ムハンマド皇太子の関与も疑われている。

これにとばっちりを受ける形となったのが、ソフトバンクが昨年サウジとともに立ち上げた10兆円という世界最大のベンチャー投資ファンド、「ビジョンファンド」だ。

孫正義氏 Photo by GettyImages

ベンチャーキャピタル(以後“VC”)としては、ビジョンファンドは異様に大きい。米国業界団体のNVCAによると、米国のVCが昨年投資した金額は840億ドル、日本円で9兆円程度だ。「ビジョンファンド」は、一つのファンドでその規模を上回ってしまうのだ。

最近では第2ファンドの立ち上げに向け、サウジが5兆円の追加投資をコミットしたとの報道もある。しかし、ESG投資(詳しくは当連載の過去記事を参照されたい)の動きが世界で拡大するなか、人権侵害など「血のマネー」と烙印を押される資金の受け入れや協業をためらう企業や投資家は多い。今後のファンドの成長性に大きな影がさした格好だ。

 

そもそもソフトバンクという会社は、事業会社なのか、VCなのか分かりにくい。「ソフトバンク」という社名は、孫正義会長がソフトウェアのインフラ企業、つまり「ソフトウェア」の「銀行(バンク)」になる、というビジョンをこめて命名したものだが、近年は成長軸を通信から再び投資事業に移して、文字通り「バンク=金融」化しているようだ。

たしかにソフトバンク、というか、孫さんの投資レコードは申し分ない。ソフトバンクは2000年に20億円をアリババに投資したが、それが今では12兆円弱となっている。リターンはざっくり6000倍。普通のVCが羨ましくて歯ぎしりする大成功だ。

ベンチャー投資は株式市場と連動して浮き沈みを繰り返してきたが、近年は再びドットコム・ブーム以来の活況を呈している。NVCAによると、昨年の年間投資額840億ドルに対して、今年は6月までの半年だけで570億ドルと加速している。

ソフトバンクが再び投資事業に本格回帰した背景にも、こうしたVC市場全体の活況がある。