名前とは裏腹…ウイグル族対象「職業訓練センター」の恐るべき実態

看板を付け替えただけで、その中身は
北村 豊 プロフィール

強制収容所の中での「洗脳」

さて、2017年3月29日、新疆ウイグル自治区第12期人民代表大会常務委員会第28回会議は、審議を経て『新疆維吾尓自治区去極端化条例(新疆ウイグル自治区過激化除去条例)』(以下「過激化除去条例」)を可決した。

中国語の“去極端化”を日本語で「過激化除去」と訳したが、“極端化”とは、“極端主義(過激主義)”の影響を受けることや、過激な宗教思想の観念に染まることを意味するので、過激主義に染まるのを事前に食い止める条例と考えればよいと思う。

過激化除去条例は、『中華人民共和国憲法』、『中華人民共和国反テロリズム法』、中国国務院の『宗教事務条例』などの関連法規に基づき、“極端化”を抑制・除去し、“極端化”の侵害を防止することにより、長期にわたる社会の安定を実現する目的で、新疆の実情に合わせて制定されたもので、同年4月1日から施行された。

同条例の第2章「“極端化”の主要表現」第9条には、「過激思想の影響を受ける」として禁止事項が列挙されているが、その中には「男子が非正常なひげをたくわえること」、「女子が公共の場で全身を覆うニカブや頭を隠すヒジャブを着用すること」などが含まれていた。

ウイグル族を代表とするイスラム教徒の少数民族にとって、男子がひげをたくわえるのは1人前の男性であることの証であり、女子が顔と手以外を隠すのはコーランの教えに基づく女性のたしなみである。

こうした禁止事項の条例化は、イスラム教徒の少数民族から宗教的要素を除去して中国に同化させ、中国共産党に忠誠を示すように洗脳することを最終目的としている。それに成功すれば、過激分子のなり手がいなくなり、過激主義の浸透を防ぐことができるのである。

 

2017年4月1日に過激化除去条例が施行されると、新疆ウイグル自治区全域で開始されたのが、自治区内の各地に設置された「再教育」のための強制収容所にウイグル族を主体とするイスラム教徒を送り込むことだった。

非正常なひげを伸ばしていると判定された男性、ヒジャブで頭を隠していると判定された女性、過激思想の影響を受けていると思われる発言をした者、子供に中国政府の教育を受けさせない者など、禁止事項に抵触した者は次々と強制収容所へ送り込まれ、一般に3か月間から半年間の再教育という名の洗脳を受けさせられる。

強制収容所では被収容者間の私語は厳禁とされ、被収容者たちは連日「紅歌(中国共産党を称える歌)」を歌わされ、中国語の読み書きを学ばされ、毛沢東や習近平など中国共産党指導者の講話を学習させられる。

食事の前には「習近平万歳」と唱えさせられる。こうした中で反抗的な態度を取ったり、学習の成果が上がらないと、食事抜き、独居房、拷問などを含む各種の処罰が与えられるのだという。

こうした「再教育」のための強制収容所が新疆ウイグル自治区内に何カ所存在するかは、数字が一切公表されていないので不明である。

しかし、2018年8月13日にスイスのジュネーブで開かれた国連の補助機関「人種差別の撤廃に関する委員会」の会議で、米国の人権活動家が「中国・新疆ウイグル自治区の再教育施設にはウイグル族ら100万人以上が強制収容されている」と指摘した。

また、9月13日付の産経ニュースは、「8月30日に米国のNPO『ウイグル人権プロジェクト』の代表であるニコール・モーグレットは、イスラム教徒約1000万人以上の10人に1人に当たる100万人以上が拘束され、拷問や虐待を受け、イスラム教を否定し、習近平国家主席や中国共産党をたたえるよう強制されていると訴えた」と報じた。