松本人志はもう「時事問題」を語るのをやめたほうがいい

彼はいったい何がしたいのか…?
原田 隆之 プロフィール

何がしたいのか

松本発言への批判に対し、「芸人に良識を求めてどうする」という擁護論も少なからず見られた。しかし、芸人であれば、面白いことを言えばよい。

今回の事件は、当然笑いにできるようなものではないが、時事問題について発言したいのなら、別の話題でクスっと笑えるようなシニカルな発言の1つもしてみたらどうかと思う。死人に鞭打つより、そのほうがよほど意味がある。

「ワイドナショー」に出演している古市憲寿氏は、同じく炎上の常連であっても、頭がいいので計算づくなのか、それとも単に空気が読めないだけなのかわからないような「芸風」でクスっと笑える炎上が多い。

たとえば、貴乃花親方引退のときに別の番組で、一貫して貴乃花批判、相撲協会擁護の論陣を張っていた相撲レポーターの横野レイコ氏に対し、「追い出せて嬉しいなって感じなんですか」と「負けた側」に立ってシニカルな突っ込みを入れていた。

同じことをほかの誰かが言ったら場が凍りついたかもしれないが、笑いにしてしまう彼の芸は、最近ますます磨きがかかってきたようだ。

 

それに比べて、松本人志の一連の発言は、まったく面白くないし笑えるところがない。単に薄い評論家気取りだからである。

本人は否定するかもしれないが、映画を撮ったり、時事問題を論じたりするところを見ると、北野武をなぞっているのだろうか。

しかし、真似をしているだけで、そこには何のオリジナリティもないし、映画にしろ、ニュースへのコメントにしろ、悲しいかな著しい劣化版でしかない。

〔PHOTO〕gettyimages

松本人志はいったい何がしたいのだろうか。

お笑いの世界に飽き足らず、色気を出して、次は芸術や論壇を目指そうというのか。あるいは、選挙にでも出るつもりなのだろうか。もし出馬したら、小川榮太郎は絶対に落選するが、松本人志は絶対に当選するだろうし、そんな光景は見たくもない。

冒頭で、松本人志のお笑いは観なくなったと述べた。今回は、コメントを批判するために、過去のコメントについては一通り調べた。調べもしないで批判することの無責任さを彼らと共有したくないからだ。

しかし、彼のお笑いは面白くないのでもう観る気がしない。観もしないで「面白くない」とは何事だと言われるかもしれない。けれども、時事問題とは違って、お笑いについては「観ないこと」もまた、お笑いファンとしての態度表明の1つだからである。

とはいえ、心のどこかでは、また昔のように松本人志に笑わせてほしいと願っている自分がいる。

このまま小さな北野武や小川榮太郎にはなってほしくない。

本来は人を笑わせ楽しくさせてくれる天才である松ちゃんが、心ない言葉で人を傷つけ続けているのをこれ以上は観たくない。

笑えない毒を吐くごとに、芸人・松本人志は死んでゆく。