今年の夏は辟易するほど暑かった。また、記録破りの強烈な台風がいくつも日本列島を襲った(まさにこれを書いている時も、台風24号による強烈な風がわが家を揺らしている)。おかげで例年にない大きな被害が列島各地で引き起こされた。こんな一夏を過ごすと、その原因について深掘りしたくもなる。
今年の猛暑は、「エルニーニョ・モドキ」と名付けられた太平洋の熱帯域における現象が直接的な原因にあるらしい(JAMSTECニュース:コラム「インド洋に正のダイポールモード現象、太平洋にエルニーニョモドキ現象が久しぶりに同時発生か」)。そして、特に猛暑が頻発するのは近年の顕著な傾向であることは、統計が如実に示している。
しかし、なぜ近年頻発するようになったのか? 地球温暖化が引き金を引いているのか? そんな素朴な疑問に答えるべく、研究者たちの解説がマスコミを通してちらほら聞こえてくる。しかし、「両者の間には関係があると考えられる」などといった、どことなく歯切れの悪いコメントが並んでいる。
科学はそんな単純な問いにも確信をもって答えられないのか? という批判もあろうし、その隙をついて地球温暖化懐疑論や陰謀論も囁かれる。
地球全体の平均気温は20世紀初頭に比べ、すでに1℃あまり上昇した。近年の猛暑の直接的な原因はともかく、その背後には「地球温暖化」が潜んでいるのではないか、と考える研究者は多い。
しかし世界各地で起こる1つ1つの異常気象を切り出して、それらを地球温暖化という背後を流れる大きな現象と厳密に対応させることは、言うほど易しいものではない。どこかが涼しくなった分、他のどこかが暑くなっただけのことかもしれない。そもそもレベルの異なる話の因果関係を厳密に証明することの難しさはかねてから指摘されてきたことだ。
厳密に証明できないものを自明のごとく吹聴することは、誠実な科学者ならふつうしないものである。