至れり尽くせりのモテ指南…これが「地方婚活移住ツアー」のリアルだ

連載「婚難の時代」第3回
共同通信 生活報道部取材班 プロフィール

バスの座席決めは「ミスが許されない」

その日の午後、市の観光名所である現代美術館に到着。バスの中で意気投合して仲良く展示を見る男女や、マスターの助言を守ってぎこちなく女性の荷物を持つ男性がいる一方で、誰にも声をかけられず所在なさげに歩く女性の姿も。その近くには、座ってマイペースに休憩する男性がいた。

交流会などの初日の行程を終えた後の午後10時。マスターと運営スタッフは参加者全員に気に入った異性の番号を書き込んでもらったカードを手にホテルの一室に集まった。

女性の人気はばらけたが、男性の1番人気はダントツで公務員だった。婚活の取材をしていると、どこにいっても公務員の人気は高い。

 

「AさんとBさんはお互いに相思相愛」「C君とDさんは美術館でツーショットだった」。カードや日中の様子を考慮して、翌日のバスの座席を決めていく。何度も読み合わせをして、番号と座席に間違いがないかをチェックしていく。

スタッフの一人は「人生を左右するかもしれないので、ミスは許されない」と話した。ただ、どんなに細心の注意を払って決めても「なんで隣の席にしてくれないんだ」「あの人は私のことを気に入っていたはずなのにおかしい」と納得できない参加者からクレームを受けることもあるという。

至れり尽くせりの「お膳立て」はカップルになる確率を上げるため。膝を突き合わせた話し合いは深夜まで続いた。

現代美術館を見学する移住婚活ツアーの参加者ら=2017年3月、新潟県十日町市 ©️共同通信社

女性たちは3連休の中日、新幹線と在来線、貸し切りバスを乗り継いでやってきた。

東京都内に住む歯科衛生士の女性(36)は「便利すぎてあれこれ求める都会暮らしに疲れてしまった。田舎での『スローライフ』に憧れる」と打ち明ける。

ただの移住ではなく結婚もしたい理由は3つ。子どもがほしい、親を安心させてあげたい、そして世間体――。しかし、職場での出会いはなく、結婚相談所にも入会している。

「1泊2日のツアーなら、条件ではなく人柄で相手のことを見ることができそう。生活費も安いので、東京よりも相手の年収を気にしないでいい」と期待する。

今回のツアーに女性は往復の交通費、宿泊代、食事代を含めて1万円で参加することができる。地元の魅力を知ってもらうため、美術館や酒造を案内し、宿泊地は温泉。夜には特別にキャンドルをともした「雪灯り」まで用意された。

しかし、中には、途中から男性とほとんど話すことなく、スマートフォンでの写真撮影に夢中になっている女性もいた。その後、さっそくインスタグラムに写真をアップし、「会社員をしながらブロガーもやっているんです」とうれしそうに話していた。

男性の1人は「婚活じゃなくて観光目的で来たのかな」といぶかしがった。

返信の仕方も手取り足取り…

2日目の昼。古い農家を改装し、地元食材をふんだんに使った料理を出す小千谷市のレストランが、最後のフリータイムとなった。

マスターはもじもじと席に座ったままの男性たちを個別に呼び出し、「彼女も誘われるのを待っているぞ」と積極的に行動するようハッパを掛けた。

この日は10組がカップルになり、連絡先を交換した。同い年の女性とカップルになった団体職員の男性(27)は「マスターたちの助言やサポートがあったので、自然と距離を縮めることができた。周りがどんどん結婚しているので、自分も早いうちにできたら」と感謝した。

ただ、新潟県ではこれまでの移住婚活ツアーで計20組以上がカップルになったが、遠距離が災いしてか本格的な交際に発展しないケースもあるという。