至れり尽くせりのモテ指南…これが「地方婚活移住ツアー」のリアルだ

連載「婚難の時代」第3回
めまぐるしい早さで変化する「都会」と人口減少で先細りする「地方」。普段は巡り会う機会がない2つの地域の男女の仲を「婚活」によって取り持とうと、自治体が動き出している。観光地巡りから恋愛ハウツー本さながらのアドバイスまで、至れり尽くせりのサービスがついた2日間の婚活移住ツアーを取材すると、独身男女の結婚に賭ける思いが垣間見えた。その効果のほどは――。

「恥をかけ!」婚活マスターの“モテ指南”

昨年3月、まだ雪深い新潟県十日町市の道の駅。早朝に、近隣市町に住む26~42歳の独身男性14人が会議室に集まった。この日から1泊2日で開かれる首都圏の女性たちとの婚活ツアーを前に、「選ばれる男」になるセミナーを受講するためだ。

「恥をかけ!笑われることを恐れるな!!」 

「婚活マスター」として活動する講師役の高橋そうすけさん(43)が身ぶり手ぶりを交えながら男性たちに熱く語り掛ける。

 

その後も「自己アピールばかりで空気が読めない男はモテない」「女性の相談を聞くときは『そうなんだ』『わかる』と共感の相づちを」「エスコート上手な男になれ」いった〝モテ指南〟が次々と飛び出した。

終盤、マスターの「昔は生活のために結婚する女性が多かったけれど、今は一人でも生きていける世の中になった。この人と一緒なら、もっと幸せになれるという人を探している」という語りかけにうなずく男性たち。

約1時間の講義の後、引き締まった表情になり、貸し切りバスでやってきた13人の女性たちと対面した。

新潟県内の男性と首都圏の女性を結び付ける移住婚活ツアー事業は、県と希望する市町村の共催で2016年度に実施した。女性は新潟へ移住することが前提で、結婚相談所「ツヴァイ」に業務委託している。

最初は地元の料理が堪能できるレストランで、席替えをしながらの1対1の自己紹介タイム。男性は農業や製造業、自営業など地域に密着した仕事に就いている人が多く、女性は27~38歳で職業はさまざまだ。

お互いにニックネームで呼び合うのがルールとなっている。人数が多いので、男女とも合間に「顔は○」「話が盛り上がらない×」「公務員◎」などこっそり特徴をメモしていく。 

新潟の銘菓と言えば「柿の種」。米菓会社の工場で20年近く柿の種を作り続けているという30代の男性に参加理由を尋ねた。

柿の種は24時間体制で製造されているため、3交代制勤務で、明け方に帰宅することも多い。「気づいたら、ここ10年くらい、まともに話した異性は同居する母親とパートのおばちゃんだけ。このまま柿の種に人生を捧げそうで怖くなった」

関東からUターンした会社員の男性(36)は、数年前から県内の婚活イベントにも何度も参加している。しかし、都会ほど参加者が多くないため、「常連」の女性と再会することが増えてきた。

最近、婚活パーティーで再会した女性に「お久しぶりです」と声をかけたら「やめてください!」と怒られた。「何度も参加しているのがばれると余り物みたいで恥ずかしいと。婚活イベントではわかっていても『初めまして』と挨拶するのがルールなんだそうです」と男性は苦笑いする。

十日町市の担当者は「市だけでイベントを開いても参加者が固定してしまう。こうしたイベントをきっかけに県外の女性がうちに移り住んでくれれば」と期待する。