優秀な中国人留学生が、日本の「医学部」に大挙してやってくる日

その時は、突然やってくるかも
原田 広幸 プロフィール

中国人エリートはまだ知らない

こうして、中国人のエリートが、日本の医学部を志したら、どうなるだろうか。現在のところ、中国人のエリートはまだ、医師を目指していない。それは前述したように、中国の医師のステータスと待遇の悪さがゆえんだ。

中国の北京大学や清華大学に入れるのは、それこそ、日本の東大医学部レベルの頭脳の持ち主だけである。そこで、中国の上流階級は、子息をアメリカに留学させる。上流階級の一部と中流階級の教育熱の高いクラスは、日本へ子息を送る。こういった図式が出来ているのだ。

中国人のトップエリートは北京大学や清華大学、ハーバードやスタンフォードやMITを目指し、その下のエリート層が東大や京大、東工大にやってくる。さらにその下の層が、旧帝大や早稲田慶應に入るといった具合だ。

実際、中国からの留学目的の長期滞在者も増えている。とくに、若年者、高校生や中学生が、中国の大学ではなく日本の大学に入るために、日本にやってくるという例が、以前よりも多くなった。

 

現在では、日本の大学を目指す中国人向け予備校が人気で、筆者の知っている予備校でも、300人以上の大学受験生を指導している。幸い、多くの中国人予備校生の志望校は、東大や早稲田といったブランド大学の一般学部だ。医学部の人気は、日本人に比べてだいぶ控えめで、毎年、数人が医学部志望するのみだという。

その彼らが、日本の医学部枠9,419人を本気で狙ってきたらどうなるか。中国ではなりたくない医師という仕事も、日本ではステータスも給料もトップクラスに高く、最高の職業であるということを彼らが知ったら……?

彼らは日本で医師免許を取得し、中国に戻ることなく、日本の医師になるだろう。あるいは、日本の先進医療を学んだ上で、中国に戻ってAIエンジニアとともに中国の近未来の医療体制を作っていくかもしれない。

中国のAI研究がどれほど進もうとも、AIはデータ(臨床のビッグデータ)と、AIに教え込む教師の役割をするプログラムが必要になる。そして、なによりも、中国語を解する医師そのものの絶対数も必要になってくる。

日本への大学留学費用に対する将来リターンは、東大や早稲田よりも医学部の方が高い、という事実が知られてしまったら、計算高い中国の富裕層が、黙って見ているはずはないではないか。