優秀な中国人留学生が、日本の「医学部」に大挙してやってくる日

その時は、突然やってくるかも
原田 広幸 プロフィール

中国では、AI医療への投資がはじまっている

日本よりだいぶ遅れて高齢化がはじまる中国では、医療とAIへ投資を呼び込むことで、この問題に対応しようとしている。

たとえば、Bloombergの情報によれば、ソフトバンクグループは、中国の保険会社「中国平安保険」の主導するAIによる医療診断サイトに4億ドルもの大金を出資するという(https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-01-19/ping-an-health-app-is-said-to-near-400-million-softbank-funding)。

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もちろん、これはほんの一例にすぎない。保険会社にとって、掛け金を支払う中国国民が病気にならないほど儲けがあがるから、医療分野のAIに投資を行い、“予防”医療を中心とした医療システムの構築に躍起になっているのだ。

すでに、AIをはじめとするコンピュータ・サイエンスの世界的拠点は、シリコンバレー(アメリカ)とともに、深圳[シンセン](中国)が挙げられるようになっている。

 

AI(人工知能)とロボティックス(ロボット工学)、バイオテクノロジー(生命工学)、ゲノム医療の融合が進むと、知的能力と経験値、高度な技術を必要とするはずの医師という職業も、必要がなくなると中国政府は考えているようだ。

「CSランキング」というアメリカの大学格付けサイトによれば、人工知能分野の大学ランキングに、1位のカーネギーメロン大学(米)に次いで、2位に清華大学(中国)が、3位に北京大学(中国)とスタンフォード大学(米)が並んでいる。日本とは、本気度が桁違いである。
http://csrankings.org/#/fromyear/2016/toyear/2018/index?ai&vision&mlmining&nlp&ir&world

日本の医療は注目されている

とはいえ現状では、中国の医療水準はまだまだ低い。中国の富裕層は中国のAIが中国の医療レベルを押し上げるのを待ってはいられない。

そこで、中国の金持ちたちは、健康診断や、深刻な病気の治療のために、高水準の医療を求めて、アメリカや日本に行く。医療ツーリズムが流行っているのだという。

現在、中国人向けの観光目的のビザ発行件数は400万件を上回っている。そのうちの10%近くは、日本の医療機関への受診を目的として来日しているというのだ。

日本政策投資銀行の統計によれば、2020年までに、医療目的の訪日中国人は年間30万人を超えると予想され、潜在市場規模は5507億円と推計されている(https://www.f-ric.co.jp/fs/201010/28-31.pdf)。

また、滞在日数が最長90日の観光ビザに対し、入院を前提として最長6カ月まで滞在できる医療滞在ビザの発給数は、平成29年には約1400件、そのうちの1200件弱が中国人であった。

一方、日本政府も外国人の医療ツーリズムの受け入れに前向きだ。経済産業省は、「医療インバウンド」と称し、治療や検診を目的に訪日する外国人を増やそうとしている。保険制度が崩壊の危機にある日本だが、自由診療で高額な治療費を払ってくれる外国人は、いいお客さんだ。

しかし実はこの話はそう喜んでばかりいられる話ではない。じつは“裏医療ツーリズム”が横行しているという。日本の高水準の医療を安く受けたい病気の中国人が、留学ビザを取得して訪日し、国民健康保険に加入した上で(三ヶ月以上の在留資格を持つ外国人は国保に加入する義務がある)、日本の医療機関にかかるというのだ。

その現実を知ってか知らずか、さらに日本政府は、医療のアウトバウンドにも力を入れたいと考え始めた。「アジア健康構想」と称し、「保健医療の制度設計や運用を含む地域単位での医療・介護システムである地域包括ケアシステムの概念そのものを“輸出”すべき」としている。(政府・官邸)

そして、次が重要である。厚生労働省は、その「アジア健康構想」に向けた基本方針として、日本の医学部への留学生向けに、20億円規模の支援を準備しているというのだ。