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元NHK、エースアナウンサーの価値観を変えた「大物芸術家の言葉」

登坂淳一「わが人生最高の10冊」

プレッシャーに解をくれた

僕の読書の傾向は、一言でいえば乱読です。小学校のころに、家にあった文学全集で芥川龍之介や夏目漱石を読み始め、松本清張など社会派の推理小説も手に取り、わからないなりに読破していきました。その後、大学時代には英米文学など翻訳物も読み漁りました。

今回挙げた10冊は、社会人になってから読み、印象的だった本に絞っています。小説も大好きですが、図らずも3位まではノンフィクションです。

1位の岡本太郎『自分の中に毒を持て』は2010年、NHKの東京の放送センターから札幌放送局に異動になったころに、出会った本です。

エネルギッシュで特異な作風を持つ芸術家が、人生を振り返りながら、自身の生き方の指針を力強い言葉で綴っています。今も覚えていますが、冒頭の、「人生に挑み、ほんとうに生きるには、瞬間瞬間に新しく生まれかわって運命をひらくのだ」という言葉で、ガツンと衝撃を受けました。

転勤先だった北海道は当時、民放が強く、視聴率でリードされていたNHKは巻き返しを図り、「新NHK」を掲げ、改革を行います。文字通り、その顔になったのが僕でした。

笑顔の大写しのポスターが至るところに貼られ、新しい夕方のニュース番組を任されました。巨大な組織の一員でありつつ、既存の枠からはみ出す大胆なキャスター像を求められ、プレッシャーで苦悩する毎日。その解を与えてくれたのがこの本です。

波風立てず淡々と仕事をこなし、一定期間の後に東京に戻る選択もあったでしょうが、「自分と戦え」「成功しようと思うな」「他人と比べるな」などの言葉を読むうち、悩んでいた自分を笑い飛ばされ、叱咤激励された気持ちになりました。

僕も放送で言葉を使う、表現者の一人として、自分をさらけ出し、いろんな新しいことに体当たりで挑戦しようと決意します。価値観を変えてくれた一冊です。