社会は「人間を作る工場」か?村田沙耶香『地球星人』衝撃の問いかけ

「常識」を疑う作家の凄み

村田沙耶香の小説は、とてもクリアである。

世界をきれいにわかりやすく説明してくれる。読んでいてなかなか気持ちがいい。

世界を捉える独自の視点がしっかり設定されており、それにぶれがない。

新しい視点を与えてくれて、そこが心地いい。

村田沙耶香の小説の魅力はそこにあるとおもう。

読みやすい。

世界を違った角度から見せてくれ、刺激的である。

ただ、その視点設定の歪みぐあいが尋常でない。

気楽に読めて、恐ろしい衝撃を受けてしまう。

村田沙耶香は芥川賞を取った『コンビニ人間』で広く注目され、今年は『地球星人』を出した。

楽しげなタイトルと、やさしい文体とは裏腹に、その描き出す世界は衝撃的である。読めば、世界が違ってみえる。力強い文学世界がそこにある。

弱い立場に甘んじない清々しさ

彼女の物語の主人公は、だいたい社会的な立場が弱い。

村田沙耶香の登場人物たちは、「暴力」に対して常に意識的に生きている。周囲に「暴力」が潜む世界では、女性は弱い立場である。そして主人公は、女性世界でもそのヒエラルキーが低い位置にいる。

ただ、彼女たちは自分が弱い立場にあることに甘んじているわけではない。

社会と適合しようとしている。

 

その努力はときに奇妙なものだったりするのだが、しかし逃げていない。

村田沙耶香の小説を読んでるときに感じる明るさは、このあたりに起因している。

客観的に見れば、かなり厳しそうなポジションにいる主人公だけれど、その立場を自覚しているがゆえに、かえって余裕がある。自分のつらさも、強圧的な周りも、それぞれの立場としての演技というようにとらえている。その余裕が明るさにつながっている。

息苦しい展開をする物語であっても、そういう明るさゆえに、先を追って読んでしまう。