元経済ヤクザが読み解く「米中新冷戦」の本当の恐ろしさ

アウトローだからこそ分かることがある
猫組長

人民元の「ドル呪縛脱出」

ところで現在の米中間の貿易戦争は「物」を巡る関税を武器とした応酬だが、「物」の動きには、「金」(マネー)の動きが連動する。「人民元がドルから独立しようしている」という観測が地下経済に届いている。

ご存知のように人民元は事実上、ドルペック制となっている。経済基盤の弱い新興国では、為替相場も不安定で、第三国の通貨による影響も受けやすい。そこで、為替レートを安定させるために、基軸通貨である「ドル」と連動させることをドルペックと呼ぶ。簡単にいえば人民元はドルの支配下におかれている状態なのだ。

かつて中国は香港を金融センターにして、外貨のやり取りをしていた。しかし現在、特別行政区である香港にドルを持って行っても「要らない」と断られるようになっている。代わって勧められるのは、中国政府が新たに支配下である内陸に作った金融センター「深セン」への持ち込みだ。

加えて中国内から国外への金(マネー)の持ち出しは厳しく規制されている。一時期の中国人の爆買いが鳴りを潜めたのもこのためなのだが、中国国内でビジネスを行い稼いだ金(マネー)を持ち出すことはかなり難しくなっている。「外貨はすべて国内に引き入れ、一度入れた金(マネー)は国外に出さない」というのが現在の中国政府の方針である。

 

さて今年――特に、アメリカが中国製品への追加関税を発表してから、中国はこれまで以上に「金」(ゴールド)の購入量を加速させている。中国市民は歴史的にも資産としての金保有を好むのだが、今回の動きはそうしたレベルではない。金(ゴールド)を求めているのは中国の政府系企業で、しかも現物だ。

石油備蓄量増加の時がそうだったように、地下経済人たちはこの種の動きに鼻が効く。私の顔見知りもこの機に一儲けをしようと、中国向けの金(ゴールド)を求めて激しく動いている。

これらの動きから考えられる可能性の一つが、人民元のドル支配からの脱出だろう。第二次世界大戦終戦直前アメリカに世界の中央銀行が保有している金(ゴールド)の3分の2が集まり、ドルは「金1オンス=35ドル」の基軸通貨となった。

現在の世界情勢で人民元が今すぐドルの呪縛から離脱することは難しいものの、外貨を自国内にプールしながら、「金」(ゴールド)の保有量を上げることで、少しでもドルの影響力を弱くしたいという中国政府の思惑は見えてくるだろう。

国内外のメディアではトランプ時代の分断を「=悪」と捉える報道が多くされている。改めて考えなければならないのは、国家は「イズム」を追求しているのではなく、「国益」を追求しているという現実だろう。アメリカ前大統領オバマ氏が核廃絶を訴えたのは、世界平和を求めてのことではなく、核抑止力に頼らない防衛安全保障政策の方が軍事費への圧迫が少ないと考えただけのことだ。

アジアの末端の国のインテリジェンス機関でさえ、「オバマ氏は冷淡な人間である」というのは共通認識となっている。オバマ時代のグローバリズム勃興も、世界の融和を目指したのではなく、それがアメリカの国益を最大限に叶えるという現実的な政策の結果に過ぎない。奇しくも日本には「友愛」というイズムを本気で信じて実践したトップがいたが――。

米中貿易戦争が中間選挙後に緩和するという意見もあるが、前述したようにこの緊張をけん引しているのはアメリカ議会だ。1945年から1989年までの実に44年間、アメリカは旧ソ連と冷戦を演じる。是非はともかく、2つの巨大大国が緊張を生み出すことで、自由主義陣営は驚くべき程の経済的果実を得ることとなった。猛禽類のごときアメリカの利益追求は、91年に旧ソ連を崩壊させるまで続いていたことを忘れてはいけない。新たな戦争はいつまで続くのか?アメリカの場合、それは相手が倒れるまで、なのだ。

さて、激変の時代こそ新たなビジネスチャンスが生まれる瞬間だ。トランプ時代の分断も「善悪」ではなく、「誰がどう利益を得ようとしているのか」という視点から考えなければ、新時代のチャンスを逃すことになるだろう。