元経済ヤクザが読み解く「米中新冷戦」の本当の恐ろしさ

アウトローだからこそ分かることがある

世の中の人――特に発信力の強い人の中には、政治を「イズムの追及」だと考える人が多いようだ。しかし私が長く住んだ暴力の世界では、政治は「実利の追及」というリアリティーでしかない。評論家・渡邉哲也氏との共著である『2019年裏と表で読み解く日本経済』でも明らかにしているが、日増しに激化する米中貿易戦争を暴力経済学的観点から分析してみよう。

「ペンス演説」の重要な意味

まずは、ここまでの米中対立の流れを簡単に整理したい。

最初に口火を切ったのはトランプ政権だ。今年3月2日に米通商拡大法232条を適用する形で、中国製品を主な標的として追加関税を課す方針を表明。4月2日には中国政府がアメリカからの輸入品に追加関税を課す対抗措置を発表した。その後両国は相手国の輸入品を狙い撃ちにしたさらなる「追加関税」で、応酬を繰り広げる。

そして7月6日、ついにアメリカは最初の実行措置として340億米ドル相当の中国製品に対して、25%の追加関税を発動。中国政府も同日の北京時間0時に追加関税を発動して、米中貿易戦争が開戦した。

 

誤解してはならないのは、アメリカの対中姿勢が、大統領であるドナルド・トランプ氏(72)の個人的感情によって決まっているわけではない、ということだ。確かにトランプ流外交術は、相手に「イエスか『はい』」しか許さず、「ノー」の場合はさらにハードルを上げて再び「イエスか『はい』」を迫るという手法だ。しかし、ますます強くなる対中規制をけん引しているのは、トランプではなくむしろアメリカ議会であることはあまり伝わっていない。

米中貿易戦争の中でアメリカが特に問題としているのが知的財産の流出だ。中国の大手通信機メーカーZTE(中興通訊)を窃盗犯と断定して、今年6月には上院がZTEとアメリカ企業の取引を禁止する制裁措置の継続を、与野党の圧倒的賛成多数で可決。貿易戦争開戦後も「大統領の対中政策は手ぬるい」と与野党の議員がコメント。

中国企業がアメリカ企業に投資、買収することで知的財産流出が起こることから、議会が外資の対米投資を厳しく審査する新法を作り、トランプ氏が8月に署名している。強硬策を先導しているのは、むしろ議会のほうなのだ。

ますます強まるアメリカの姿勢に対し、中国側は繰り返し改革・解放を行い公平な市場実現を目指していることを国際社会にアピールしてきた。しかし、10月4日にペンス副大統領(59)がワシントンで行った演説で、中国と中国共産党を区別しながら、中国共産党の主張を「リップサービス」とはねつけ、「制裁を継続していく」と対決姿勢を崩さないこと改めて名言した。

さらにペンス氏は、中国共産党が11月の米中間選挙に向けてトランプ氏敗北に干渉していることを指摘し、防衛安全保障でも中国と対立することも訴えた。

現在、この「ペンス演説」はアメリカの国家戦略を示す強いメッセージとして、各国のインテリジェンス機関が注目し、分析をしているという。アメリカは与野党一丸となって、中国を旧ソ連同様の「敵国」と認定し、経済戦争だけではなく全面対立の姿勢を取っているのである。