丸山ゴンザレス×ハロルド作石「ニューヨークと裏社会」を語る

意外な共通点が見えてきた

危険地帯ジャーナリストの丸山ゴンザレスが、大都市ニューヨークの知られざる顔に迫った『GONZALES IN NEW YORK』を上梓。世界のスラム街や裏社会の現状を暴くゴンザレス氏が世界のカルチャーの中心とも言えるニューヨークに興味を持ったのは、無職の頃に読んだマンガ『BECK』との出会いがきっかけだったという。

今回は、その作者であり、最新作『7人のシェイクスピア』が話題のハロルド作石先生との対談が実現。ニューヨークの話に終始するかと思いきや、対談を通じて、二人の意外な共通点が見えてきた――。(ライター・松田美保 撮影・林和也)

 

無職の自分を奮い立たせたあの作品

丸山ゴンザレス(以下、丸山) 今回、先生にお会いできて感激です。先生の代表作の一つである『BECK』は、自分の人生に多大な影響を与えてくれた作品です。特に最新刊の『GONZALES IN NEW YORK』は、『BECK』がなければ生まれませんでした。

ハロルド作石(以下、作石) 最初にその話を聞いて驚きました。対談の依頼を受けたときに、「丸山ゴンザレスって、『クレイジージャーニー』のあの丸山ゴンザレスさんですよね?」って二度聞きしましたもん。なんで私なんだろうって(笑)。

『BECK』で描いたニューヨークは、丸山さんが行くようなディープな場所、というわけではなかったので。

丸山 ニューヨークに興味を持ったのは、『BECK』に描かれた風景がきっかけだったんですよ。学生時代、俺は考古学者になろうと思って大学院に行ったのですが、そこで挫折しまして。就職しようにも大学院卒だと就職先が限られてしまって、働き口がなくぶらぶらしていました。その頃に、何度も何度も『BECK』を読んでました。社会人になってからも壁にぶち当たるたびに読むぐらい好きな作品で……。

だから、今回、ニューヨークを中心に一冊の本をまとめるときに、ニューヨークと俺の最初の接点を綴っておこうと思いまして、冒頭に『BECK』とニューヨークへの想いを綴りました。

8月に発売された話題の書

作石 いやぁ、そう言ってくださると本当に嬉しいです。

丸山 『BECK』の終盤で主人公のコユキやバンドのメンバーたちがアメリカで飛躍を遂げる、その時の、冬のニューヨークの景色に憧れました。先生がニューヨークを舞台のひとつに選んだのには、理由があったんでしょうか。

作石 自分が20代前半の頃、帰国子女の知り合いが多かったんです。彼ら独特の雰囲気や、「ニューヨーク出身」という響きに悔しさと憧れがありました。それで、『ゴリラーマン』の連載が終了したとき、彼らと同じ空気を体験したいと思って、ニュージャージーに3ヶ月だけ語学留学したんです。

あえてニューヨークにしなかったのは、ニュージャージーは日本人が少ないと聞いていたし、リンカーン・トンネルを通ればマンハッタンもすぐだったので。英語を勉強しながら、週末はマンハッタンでライブを観たり、イーストヴィレッジでCDや本を探したり。その体験が、のちに『BECK』に繋がったところはありますね。

丸山 帰国子女コンプレックス! それは僕もありました。英語交じりに話されたときの疎外感たるや。思い出すと胃がちょっと痛くなります(笑)。ほかにも『BECK』の中で好きなところはたくさんあるんですが、やっぱり冬のニューヨークでレコーディングするシーンは特に印象的で。日本では苦境に置かれていた彼らが逆転のチャンスを掴む……レコード会社を移籍して、厳しいプロデューサーにしごかれながら、世界と「勝負」をするためのアルバムを作るシーンです。

ニューヨークという街は、勝負をしに行く場所だと思うんですよ。だから、俺もこれまでいろんな国で培った取材力をあの国でぶつけてやろうと意気込んで、ニューヨークのアンダーグラウンドの取材に入りました。

作石 ニューヨークという街は、多種多様なものが強烈に入り混じっているカオスがあります。その街の最も深いところに潜り込むなんて、凄まじいとしか言いようがない。かつて語学学校で一緒だった人も、街に飲み込まれて廃人になったヤツもいます。

ニューヨークに限らず、外国では毎日、問題が山のように起こりますが、それは丸山さんにとっては楽しいことなんでしょうか。

丸山 楽しいですね。自分に降り掛かってくる問題だったら、ですが(笑)。それをひとつずつ、どうクリアしていくのかを考えたり、実行したりするのは好きです。

たとえば、ニューヨークの地下に暮らす人々がいて、彼らに会おうと思ったことがあったんですが、どうやって地下に潜り込むのかを考えてたときは、楽しくてたまらなかった。9.11以降は警備が厳重になり、準軍事施設の様相を呈していますから、並大抵のことでは侵入できません。ほかにも問題は山積み。あれこれ考えた結果、侵入の方法を知っているヤツを探すんです。

今、向こうでは「アーバン・エクスプロレーション(都市冒険)」という分野が人気で、廃墟や地下に潜って、誰も足を踏み入れていない場所にペイントするヤツらがいて、そいつらを掴まえて、地下道の入り方を聞き出したりしてました。

作石 『クレイジージャーニー』でも放送した、ルーマニアの「ブルース・リー」も凄まじいですよね。マンガを超えてます。マンガの企画として提出したら、編集者にありえないとボツにされますよ。

丸山 駅前のマンホールから地下に入るなんて、普通じゃ考えられないですよね(笑)。