福島の米「食べて応援は自殺行為」とまだ信じている人に伝えたいこと

すでに結論は出ています
林 智裕 プロフィール

「ご飯500万杯」でようやく…

そもそも基準値だけに限らず、原発事故後にはそれまで身近とは言い難かったさまざまな放射線関連の用語や単位、数値が独り歩きしました。一方で、その意味や相場観が社会に正しく伝わったとは言い難いのではないでしょうか。

そこで、文部科学省による「中学生・高校生のための放射線副読本」の内容を参照してみましょう。

放射線による健康被害リスクが検出されるのが「100mSv(100,000μSv)以上の被曝から」とされていますから、この値に達するために必要な食事量を計算してみます。
 
食品中の放射性物質の量が基準値ぴったりの100Bq/kgと仮定し、セシウム137によって受ける影響の係数をかけます(放射性物質ごとに、同じベクレル数でも影響力の強さが異なるためです)。
100mSv(被曝の健康リスクが検出できる下限値)=0.000013(セシウム137の係数)×100(Bq/kg)×【食品の必要摂取量(kg)】

100mSv÷0.0013=【食品の必要摂取量(kg)】

【被曝の健康リスクが検出できる下限値までの食品の必要摂取量(kg)】=約76,923kg(76.923トン)

実際の食事量に換算すると、ご飯茶碗1杯分は約150gなので、51万2820杯分。しかも放射線量は玄米から精米・炊飯して食べるまでの間に約90%低減するとされていますから、白米では512万8200杯分が必要です。

放射線は「ケガレ」なのか

このように算出してみると、「基準値である100Bq/kgを越える食品を少しでも食べたら、内部被曝で健康被害が出る!」というものではないことがわかります。

「基準値」というものは、健康への影響が出る「閾値」とイコールではありません。だからこそ、各国それぞれに基準値の差も生まれています。海外と比較すれば、日本の基準値が科学的な「安全」だけに留まらず、いかに「安心」へと寄せているのかがあらわれていると言えるでしょう。

それは、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告の「年間1mSv以下」という目標を原発事故後も掲げ続けてきたことからも明らかです。これは「平常時に放射線源の厳格な管理を求める趣旨」のもと定められている目標であり、当然、「安全」と「危険」の境界線を示すものではありません。

しかし、基準値ちょうどの100Bq/kgの食べ物だけを毎日2kgずつ摂取し続けたとしてもこの勧告が求める「年間1mSv以下」という目標は達成できるほか(先ほどの白米換算では5万1,282杯)、半減期などを無視して同じ状況が100年続いたとしても、被曝による健康リスクを上昇させる100mSvには至らないのです。

 

しかも資料でも示したように、現在は東電福島第一原発事故由来の放射性物質に汚染された食品はほぼ見当たらず、ND(検出限界値未満)ばかりです。そのような状況で、100Bq/kgを超える食品を見つけ出し、kg単位で摂取すること自体が極めて困難と言えます。

すでに現実のほうが、厳しい基準値が担保する「安心」さえも追い越してしまっているのです。

そうした状況に即してもう一度計算してみると、摂取する食品が一律10Bq/kg(実際にはそれすらも無いのですが)と仮定しても、健康被害のおそれが出るまでに約769,230kg(769.23トン、白米のご飯茶碗換算では5128万2,000杯→3食ご飯のみでも約4万6832年間分)食べる計算になります。これが、「現在流通している食品を摂取することで、セシウム137による100mSvの内部被曝を受け、ガンになるリスクが1.08倍(一日110g未満の野菜しか食べないのとほぼ同等のリスク)になる必要量」です。