佐藤浩市(写真左)と清武英利(同右)両氏 撮影/野口博(Flowers)

カネから金を生む男と、汗で稼いだ金で生きる男の「決定的な違い」

【動画付き特別対談】男の生き様と金

「(俳優って)ともかく現場に自分の身体を持って行って、それでおカネをもらっているわけで、自分の汗のついた一万円札って、やっぱりダメなんですよ。簡単には使えないなと思います……」

佐藤浩市さんはそう語る。昭和の名優・三國連太郎の長男として生まれながら、父の名をいっさい借りることなく、独力で俳優の道を切り開いた。二十代の駆け出しのころはかなり貧しい思いも経験したという。「汗のついた一万円札」こそが信じられるという佐藤さんの言葉には、実感がこもる。

一方、小説『プライベートバンカー』に登場する資産家たちは、人も羨む多額の財産を手にしながら、それを守るために汲々としたり、ときに命を狙われたりする。カネがないことも苦しいが、カネはあるほどにのどが渇いていく――。

「人間の生き様とカネ」について、ドラマ『石つぶて』に主演した佐藤さんと、原作者の清武英利さんが『プライベートバンカー』文庫化に合わせ緊急対談した。

90分に渡り熱い「カネトーク」が繰り広げられた 撮影/野口博(Flowers)

金に潔癖な反骨の刑事を演じて

清武 2017年秋にWOWOWで放送された『石つぶて 外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち』は、佐藤浩市さんに主人公の警視庁捜査二課・木崎睦人刑事を演じていただき、本当にいい作品になりましたね。

木崎刑事のモデルになった中才(なかさい)宗義さんは廉吏を絵に描いたような元捜査二課刑事で、無理を言って撮影現場を見てもらったのですが、演技に心打たれたようでした。帰り道、歩きながら、「このドラマは、五つ星だな」と漏らしていたくらいです(笑)。彼の予想通り、日本民間放送連盟賞(平成30年度)テレビドラマ番組部門の優秀賞を受賞、担当プロデューサーの岡野真紀子さんは放送ウーマン賞を受賞しました。

 

佐藤 こちらこそ、ありがとうございました。

中才さんには、刑事部屋のセットでご挨拶したんですが、思ったより高揚されていましたね。清武さんの原作を読ませていただいた印象ではもっと寡黙な方かと思っていたので、少し意外でした。ドラマ化されたことで、ご自身がいままで積み上げてこられた地道な仕事に光があたって、報われたというお気持ちだったのかもしれません。捜査二課の情報係主任だった中才さんは、情報源と会った際のコーヒー代や昼食代をすべてポケットマネーで支払い、捜査費をあてにしない、おカネに対してきわめて潔癖な刑事だったそうですね。

自分の職務に忠実に、一点の曇りもなく生きたいという、見方を変えれば少し偏屈な刑事だったのかもしれませんが、詐欺や贈収賄など、二課がターゲットとしている被疑者と自分とは、まったく真逆の人間なんだという刑事としてのプライドの表れなんでしょうね。

清武 中才さんは、警視庁を60歳で定年退職して8年以上経ったいまも全然変わらないですよ。退職したあとは嘱託職員になり、犯罪被害者遺族の支援担当として5年間働き、その後も過去の人脈に頼らずに生きています。ハローワークで見つけたプール監視員の指導役をしていて、この夏もすごく忙しくしていました。

佐藤 中才さんのように、刑事としてのこだわりを外にもはっきり見せている人は偏屈と言えば偏屈ですが、その偏屈さを良しとして認める人には中才さんのほうも心を許すんでしょうね。

清武 そうでないと、人がついて来ないですから。