なぜNHKは人工知能と一緒に番組を作りはじめたのか

『AIに聞いてみた』制作陣に聞いてみた

NHK×AI

「社会が複雑化するなかで、人間が議論するだけでは解決できない問題が増えてきている――長年、番組制作に携わるなかで、私たちはそんな実感を抱いていました。

そこで、目覚ましい発達をみせるAIに社会課題を分析させ、それをもとに解決・解消のための方法を導き出してみてはどうかと思い、このシリーズを立ち上げました。

もちろん、AIを妄信しているわけではありません。しかし、人間には思いつかない『答え』が提示され、実際に社会課題の解決につながることだってあるかもしれません」(井手真也エグゼクティブ・プロデューサー)

 

NHKが独自に開発したAIに、日本が直面する社会問題の解決策を尋ねてみる――そんな大胆な設定が話題を呼ぶNHKスペシャル『AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン』。そのシリーズ第3回が、きょう10月13日(土)の夜9時放映される。(https://www.nhk.or.jp/special/askai/index.html

この番組、一体どんなふうに作られているのか、なぜAIを「主役」に据えた番組を作ろうと思ったのか、気になっている方も多いのではないか。最新回の内容を紹介するとともに、番組制作の「奥の奥」を覗いてみよう。

番組の進行役はマツコ・デラックスさんと有働由美子さん。二人の丁々発止の掛け合いも見どころの一つだ

延べ41万人分のビッグデータを解析

今回、『AIに聞いてみた』がテーマに選んだのは「健康について」だ。

健康上の制約を受けることなく日常生活が送れる期間を「健康寿命」と呼ぶが、この健康寿命と平均寿命との差が小さいほど、寝たきりにも認知症にもならず、死ぬ間際まで元気で健康に暮らせる、いわゆる「ピンピンコロリ」に近づくとされる。

超高齢社会を迎えた日本にあって、「健康寿命」を伸ばす方法を探ることは、重要な課題だ。では、どのような生活習慣が健康寿命を伸ばすのか――。番組の制作陣が健康に関する膨大なデータをAIに分析をさせ、それから導いたのは、「まず、〇〇しなさい」という、専門家をも唸らせる意外な仮説だった。

AIの分析結果から導かれた「仮説」を紹介する前に、どのような仕組みでAIが分析を行うのか、簡単に説明しておこう。

ある問題に対して仮説を提示するには、その問題をまずAIに分析させるための膨大なデータが必要となる。

今回NHKの取材班は、「健康寿命を伸ばす生活習慣」をAIに分析させるために必要なデータを求め、「JAGES」(Japan Gerontological Evaluation Study=日本老年学的評価研究機構)に協力を要請した。

JAGESは全国の大学・国立研究所などに所属する約30人の研究者らによる共同プロジェクトで、2003年から3年ごとに、高齢者(65歳以上)を対象に、生活習慣や行動に関するアンケート調査を実施してきた。今回は、そのうち、600問以上の質問に答えた、のべ41万人のデータを分析した。

このアンケートのユニークなところは、「日常的にジョギングをしますか?」「タバコを吸いますか?」といった健康との関係が明らかに強いものに限らず、「18歳より以前に親の愛を感じていましたか?」「煮物を作ることがありますか?」など、健康との関連が一見薄そうなものも、質問項目として数多く含んでいることだ。