2000年問題(Y2K)対策に追われる米電力会社のデータセンター Photo by Joe Traver / Liaison Agency

数論好き歓喜の日「1999年11月19日」のすごさをご存じですか

科学技術とブルーバックスのあゆみ③
科学史と「ブルーバックス」話題書をクロスオーバーさせて解説する好評連載、第3回はいよいよ「最大のベストセラー」となった「例の本」が登場します!
第1回「1963年、ブルーバックスの創刊第1冊目『人工頭脳時代』その中身」
第2回「ノーベル賞受賞者と新書シリーズとの「交わり」が始まったきっかけ」

1995〜2000年(1047〜1314番)

1995年、前年10月にワイルズによって証明され、実に360年にわたって論争のつづいていた「フェルマーの最終定理」に決着がつけられたことを受け、『フェルマーの大定理が解けた!』(B1074 足立恒雄)が緊急刊行される。

初版4万部があっという間に店頭からなくなり、すぐさま増刷がかかる反響ぶりだった。

フェルマーの大定理が解けた!

同じ95年には、『図解・わかる電子回路』(B1084 加藤肇/見城尚志/高橋久)も5万部を超えるベストセラーとなり、これを機に、「図解シリーズ」が充実していく。

2000年代にはカラー図解化も進み、マンガと並んで、「科学はむずかしいという先入観を改める表現と構成」の新たな発見となった。

人類史上初となる核兵器が日本に使用されてから51年目の夏、96年7月に「一瞬無差別大量殺戮」兵器誕生にいたる理論構築と開発の全歴史を克明に描いた『原子爆弾』(B1128)が刊行された。

470ページを超えるこの大著の著者は、のちに『宇宙のからくり』(B1220)で講談社科学出版賞を受賞する山田克哉である。同書をはじめ、『光と電気のからくり』(B1259)や『真空のからくり』(B1836)など、「からくり」シリーズの熱血解説で人気を博す山田は、ブルーバックスデビュー作となった『原子爆弾』の「まえがき」でこう書いている。

「確かに放射能は恐い。しかし原子力が現存する以上、恐いからといって手をこまぬいているわけにはいかないだろう。我々の人体が直接放射能を感ずることができないからこそ余計に原子力に関する基礎知識が要求されると筆者は思う」

99年のJCO臨界事故や2011年の福島第一原子力発電所事故の際に、この指摘を思い返した読者も多くいたことだろう。

原子爆弾 表1

97年、日進月歩の勢いで伸展する生命科学の分野から、世界中を驚愕させる一大ニュースが舞い込んだ。世界初のクローン羊、「ドリー」の誕生である。

ヒトが手にした生命を操作する技術が“神の領域”に足を踏み入れた事実は、倫理面を含むさまざまな議論を巻き起こすこととなった。

ドリードリーは2003年まで生き、いまは剥製が国立スコットランド博物館に展示されている(写真は1997年撮影) Photo by Getty Images

これ以降、2003年のヒトゲノム計画完了などのビッグトピックが相次ぎ、生命科学はブルーバックスの主要なテーマとして、多くの読者の関心を惹きつけていく。

この97年は、ブルーバックスにとっても大きな画期を成す年であった。新書史上初めてとなる、CD-ROMを添付した『パソコンで見る複雑系・カオス・量子』(B1160 科学シミュレーション研究会)を刊行したのである。

複雑系・カオス・量子

直径8㎝のシングルCDサイズのCD-ROMを綴じ込んだ同書は、Windowsの普及でパソコンに親しみ始めていた読者から大きく支持された。その後の3年間で10冊以上刊行されることになる、CD-ROM付きシリーズの先鞭をつけるものであった。