あなたの「痛みの伝え方」大丈夫…?医者はこんなことに困っている

覆面ドクターのないしょ話 第35回
佐々木 次郎 プロフィール

痛みを伝える患者さんの表現に唖然!?

私は腰痛持ちである。椎間板ヘルニアまで持っている。診察室でも、こうやってパソコンに向かって原稿を書いていても、座りっぱなしなので、いつまで経っても腰痛が治らない。

痛みが小康状態で油断しているとき、本がいっぱい詰まったダンボール箱を持ち上げた。その瞬間、

「ギクーッ!」

という衝撃が腰に走った。これぞまさにぎっくり腰だ。

 

さらにその半年後、今度はイスから立ち上がっただけで、またぎっくり腰に襲われた。そしてつい最近のこと。両手は手ぶらのまま、ただ普通に歩いている最中に、

「あれ? 違和感? まずいんじゃない? やばいやばい、痛ててててて!」

と、ぎっくり腰が再発してしまった。

余談だが、プロ野球選手が「腰に張りを感じてファーム行き」「大腿に違和感を覚えて故障者リスト入り」ということがよくある。それを聞く度に、「俺なんか毎日違和感あるぜ! 俺も故障者リストに入れて、しばらく仕事を休ませてくれ!」と言いたくなる。

話を戻そう。初めてのぎっくり腰のときは、「ギクーッ!」という衝撃と共に、痛くて全く動けず、そのまま固まってしまった。

作家の角田光代さんは、その著書『私の容れもの』(幻冬社文庫)の中で、痛みの指標として「ずん」という単位を提唱している。腰に「ずん」とした激痛が走ったのだろう。角田女史によれば、当時のぎっくり腰の痛みは「50ずん」だそうである。私の場合、初回のぎっくり腰の痛みは「150ずん」くらいズンと来た。

さて、私の外来に足首の捻挫をした若い女性の患者さんが来た(本連載第10回参照)。足首が腫〈は〉れてかなり痛そうだった。レントゲン検査の結果、骨折はないものの、強い捻挫を起こし、おそらく靭帯〈じんたい〉も痛んでいるのであろう。しかも中で出血して、皮膚の下に血腫(血の塊)ができている。

「かなり血がたまっていますので、注射して抜くと痛みが軽くなりますよ」

と説明すると、彼女はこう質問した。

「どこに針を刺すの?」
「血がたまっている部分に針を刺します」

彼女は軽蔑するような目で私をにらんでこう言った。

「常識的に信じられないんですけど!」

常識的と言われても……何もたまってないところに針を刺したら、それこそ非常識的だと思うのだが。そうだ、彼女は動揺して注射の痛みを怖がっているのかもしれない。

「そのまま注射すると痛いですから、麻酔をしましょう」
「どこに麻酔するんですか?」

「血がたまっている部分の表面に麻酔の注射をします」

彼女は汚い豚を見るような目で私をにらんでこう言った。

「常識的に信じられないんですけど!」

彼女はこの一点張りだ。

治りたい患者と治したい医者も、ときに診察室で対立してしまう!?(photo by isock)

処置した方がいいと思うのだが、本人が「痛がり屋さん」で、麻酔の注射さえも怖がっているのかもしれない。だがケガの痛みで困っているなら助けてあげたい。そこで、彼女に確認してみた。

「今どのくらい痛いのでしょうか?」
「えっと……レベル2って感じです」
「そ、そんな……」

私の方こそ常識的に理解できません!

「レベル2って、どの程度の痛みなのでしょうか?」