ノーベル賞受賞者と新書シリーズとの「交わり」が始まったきっかけ

科学技術とブルーバックスのあゆみ②
ブルーバックス編集部 プロフィール

1月に昭和天皇が崩御し、元号が「平成」へと変わった89年は、12月29日に日経平均株価が史上最高値をつけたのちにバブル経済の崩壊へといたる、激動の時代への画期となった。

この年の9月、「硬軟取り混ぜて科学する」ブルーバックスの真骨頂を示すような名著2冊が、同時刊行されている。

ユニークな書名が話題をよび、2009年には新装版も刊行された『イカはしゃべるし、空も飛ぶ』(B791 奥谷喬司)と、2002年にノーベル物理学賞を受賞する小柴昌俊の初めての著書『ニュートリノ天文学の誕生』(B792)である。

ニュートリノ天文学の誕生

小柴は、同書執筆の動機を「まえがき」でこう書いている。

「日本で観測方法を確立することにより、この二年間に誕生したニュートリノ天体物理学という新しい基礎科学の分野について、特に若い人たちに語りかけたいという気持ちが強かった」

日本発のこの新しい学問はやがて、小柴自身と門下生である梶田隆章にノーベル賞受賞という栄誉をもたらすこととなり、現在もなお、ホットな研究分野でありつづけている。

小柴昌俊2002年、東京大学でのノーベル賞受賞記念祝賀会にて撮影(Photo by Getty Images)

ブルーバックス「発刊のことば」には、「類書にない特色」として「科学はむずかしいという先入観を改める表現と構成」が挙げられている。

90年代を迎えたブルーバックスは、関心領域が多様化する読者の興味をより惹きつけ、科学をより楽しんでもらうために、新たな表現と構成を模索しはじめる。そのひとつが、パソコンの普及とともに充実の一途をたどったデジタル環境を活用することだった。

92年に刊行された『パソコンで遊ぶ物理シミュレーション』(B924 神原武志他)では、実際に実験することは困難な量子力学的現象や、カオス、フラクタルといった最先端のトピックスについて、独自のプログラムでパソコン画面上に再現・体験できる構成が採用されている。

パソコンで遊ぶ物理シミュレーション

別売ながら、それらプログラムを収録したフロッピーディスクを用意するなど、紙媒体とデジタル媒体を融合する試みの先駆けとなる一冊だった。

創刊32年目にあたる94年1月に刊行された通巻1000番は、『科学・あの話題はどこにいった』(大浜一之)。1000番到達の節目に大輪の花を咲かせてくれたのが『マンガ・微積分入門』(B1003 岡部恒治著 藤岡文世絵)で、発売直後に10万部を突破、累計では20万部に迫るベスト&ロングセラーとなった。

本書の成功により、マンガ表現の魅力と威力を認識したブルーバックスではこれ以降、20冊を超えるマンガ企画が刊行されていくことになる。

同年、ブルーバックスは一年間で210万部を売り上げ、通巻1000番を迎えた記念すべき年を史上最高の成績で飾った。

次回、「1995〜2000年(1047〜1314番)」はこちらからどうぞ!