「中国に乗っかり日本も儲ける」官邸の目論見は絵に描いた餅だ

安倍・習の急接近でも、現実味なし
河東 哲夫 プロフィール

日本企業は受注できるか

それでも日中がカネを出し合って、ユーラシアの某国で鉄道を作ることになったとしよう。日本がカネを出しても、日本の企業がすんなり受注できるわけではない。日本政府が供与する円借款を使って建設されるインフラ案件でさえ、日本企業が必ず受注できるわけではない。

「日本の円借款はODAと称して、実は輸出奨励金だ」という先進諸国からの批判を避けるため、日本の円借款の多くは、発注先を日本に限らない「アンタイド」となっている。インドでは、日本の円借款での地下鉄建設案件現場に行ってみたが、中国の建設企業の看板が立っていて、呆れたことがある。

日本製品は一般に過剰品質、かつ高価格、かつ納期がかかりがちで、日本製品を使っていては、案件をなかなか落札できない。

 

日本が米国と並んで最大の出資国となっているアジア開発銀行は、中央アジア諸国に日本の円借款にほぼ等しい多額のインフラ建設融資を行ってきたが、日本企業はほとんど受注できていない。世界銀行の案件については、ますます受注できていない。

インフラ用機器の生産者は手持ちの注文をこなすだけで手いっぱいのことが多く、円借款案件を落札したから来年納入してくれと言われても難色を示しがちである。

それでも中国の企業がレール、日本の企業が信号システムを供与して、一つの鉄道を作ることになったとしよう。

何か起きるか。多分、レールは1年で敷設が完了するだろうが、日本はまだ「この路線に最適のシステムを開発中。あと半年で設計に着手するが、生産ラインが今他の注文で手いっぱいだから、製造できるのは2年後。それから試験を半年繰り返し」という具合だろうから、現地政府の熱意はすっかり冷め、感謝する気持ちも失せるのだ。

それに日本と中国、双方の関係者が作業を調整しようとしても、両国の建設企業社員は言うに及ばず、大使館員の間でさえ、通訳なしには話もできないことが多いのだ。

「第三国での日中経済協力を推進する」というPRコピーは、今のように日中関係を前向きに進めようという時代には良いことだ。しかし、それはコピー以上のものではない。それに、米国との貿易黒字がこれから急減するだろう中国は、対外経済協力も急減させることだろう。

だから今必要なのは、中国や日中関係の浮沈に関係なく、日本の経済協力・融資体制をオーバーホール(分解点検修理)することだ。

途上国の所得向上で、円借款を出せる相手は減っている。途上国は借款より直接投資を求める時代になっている。経済協力で日本企業がもっと稼ぐことを考えるだけでなく、手数がかかりリスクも大きい直接投資を公的機関が支援する態勢を整えて欲しい。

そして日本側は、独りよがりに「日本の最先端技術を使った」製品を供与するのにこだわらず、現地のニーズに合ったものを、それがたとえ外国製であっても、援助としては進んで供与できるようなシステムを作ってほしい。

例えば16両編成の新幹線が3分おきに300キロの速さで通っていくのをさばく信号システムは、どの外国にも不要である。そんなものにこだわるよりも、ドクター・イエローのように保線要員の数を劇的に減らすことのできるような技術を供与する方が、途上国にはよほど評価してもらえるだろう。