10分で1億円損失…カジノにおぼれた大富豪たちの悲惨

カジノにハマらない人はいない
尾嶋 誠史 プロフィール

「また首吊りが出たらしいよ」

結局、その後、王さんとは連絡がつかないまま。王さんのマカオの滞在日数はあと2日あったものの、彼がVIPルームに再び現れることはありませんでした。滞在していたホテルもその日のうちに荷物を受け取って、チェックアウトしていたようでした。

それから1週間ほどたったころでしょうか。

王さんの担当エージェントが知り合いと雑談しているときに、「そういえば、また首吊りが出たらしい」という噂を耳にしました。

 

治安のよいマカオでは、事件はほとんどありません。

でも、その半面、残念ながら自殺のニュースは多いです。カジノで負けて、ホテルの部屋で自殺した経営者がいた。カジノで負けて、マカオの海に身を投げた人がいた、など。ここ数年は減少しつつあるものの、以前は、自殺者のニュースを耳にすることは、ごく日常的でした。

そのため、最初に彼自身もその噂を聞いた際は、「また悲しい事件があったんだな」と思うのみで、深く気に留めていなかったそうですが、後日、その自殺者がなんと王さんだったことが判明したのです。

なんでも王さんは、担当のエージェントがアテンドするVIPルームを出た後、そのままほかのジャンケットのエージェントからお金を借り、別のカジノに行ったようでした。カジノでは仮に手持ち資金がなくなったとしても、担保になりそうな資産が確認できれば、いくらでもお金を貸してもらえます。

実際、ジャンケット側は、顧客管理を徹底しているので、そのお客様がどんな車に乗っていて、どんな家に住んでいて、どんな職業の人なのかは、すべて把握しています。そこで、手持ち資金が全部なくなった王さんは、自分が乗っていたフェラーリの権利書とキーを担保にお金を借りたのでした。そして、それでも足りずに、今度は自宅から株券など、あらゆる資産の権利書を担保に、ありったけのお金を借りたものの、やはり負けてしまったようでした。

たった数日間の滞在で、あらゆる資産をはぎ取られてしまった王さん。そのショックは壮絶なものだったでしょう。そして、自分が持ちえるすべての資産をつぎ込んだ末に大負けが決定したその日の朝、そのカジノがあるホテルの一室で、王さんは首を吊っていたそうです。

王さんを担当していたエージェントが後日その話を聞いたときには、「もっとあのときに強く止めておけば」と思い、涙が止まらなかったそうです。僕もその話を聞いて以来、マカオで王さんが亡くなったホテルの前を通るたびに、彼の冥福を祈らざるを得ません。

前回の記事でもお伝えしたように、カジノはお金に余裕のある人の娯楽として、経済効果の高いエンターテインメントになりえます。しかし、余裕がない状態で自分の生活をかけるようになってしまうと、そこには破綻が待っています

カジノの経済効果は高い、そして、エンターテインメント性も十分にあります。しかし、カジノから一般市民を守る必要があること、このことは、繰り返しお伝えしたいと思います。

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