10分で1億円損失…カジノにおぼれた大富豪たちの悲惨

カジノにハマらない人はいない
尾嶋 誠史 プロフィール

「もうやめておきましょう」の助言を無視

僕たちの仕事は、あくまでお客様にカジノを楽しんでもらい、気持ちよくお金を使っていただき、そして、また来ていただくことです。お客様がカジノで破産してしまえば、当然次からは来ていただけなくなってしまいます。

そうならないために、お客様には「ほどほどに遊んで、楽しんでいただく」ことを常に目指しているので、お客様が大負けしそうになったときには横から「もう危ないです」「今日はそろそろやめておきましょう」などとそっと口を出して、クールダウンしてもらうことも多いのです。

半分くらいの人はその言葉を聞いて、「うん、そうだな」と冷静になってくれるのですが、残り半分くらいの方は、「絶対に負けを取り戻すんだ」と言い張って、こちらの言うことを聞いてくれません。

僕の知人のエージェントがアテンドしていた中国人のお金持ち・王さんも、その1人でした。

 

王さんは中国の建築業に携わる50代後半の会社社長で、いつもニコニコと穏やかな笑みを絶やさない優しい人でした。ギャンブルが大好きで、マカオに来るたびに大金を使っては、「また負けてしまった」と笑いながら帰っていくおおらかな人だったそうです。ただ、これまでは順調だった事業が、いつしかあまりうまくいかなくなったと愚痴をこぼすようになり、王さんの態度は少しずつ変わっていきました。

最後に王さんがマカオを訪れたとき、彼の様子は少し尋常ではありませんでした。

目に落ち着きがなく、ホテルにチェックインするなり、すぐにカジノに行きたがるのです。

今回は自分の人生がかかっているから」そう口にしながら、VIPルームのなかでも、一番高レートのバカラのテーブルへと向かっていったそうです。

しかし、カジノというのは不思議な場所で、その人自身が「勝ちたい」と焦れば焦るほど、負けやすいもの。王さんが一生懸命になればなるほど、どんどん負けが続いていきます。

気が付いてみれば、すでに王さんが48時間近くバカラテーブルから離れていない状態が続いており、王さんが普段設定している上限金額をとっくに数億円はオーバーしていました。

「さすがにこれはまずいのでは」

そう思った担当エージェントは、「今日はツキが悪いです。一度出直しましょう」と王さんに声をかけました。

ところが、普段ならばおとなしくその言葉を聞き入れてくれる王さんですが、今度ばかりは何度言っても聞き入れてくれません。

「まだ自分はやれる」
「もう少し頑張ればツキが戻ってくる。だから、金を貸せ」

2日間近くぶっ続けでバカラをやっている状態で、当然、体力的にはもちろん気力的にも目に見えて憔悴していたため、どう考えても勝てるわけがありません。

まさに、ギャンブラーハイに陥っている状態で、これ以上ギャンブルを続けていけば、仮に王さんに追加資金を渡したとしても、負けることは必至。ここでお金を渡してしまえば、王さんはさらなる負債を作って、確実に破産するだろう。そう考えた担当エージェントが資金を出し渋っていると、王さんは

「わかった、もうお前には頼まない。俺を1人にしてくれ」

 といって、険しい顔をして、どこかへ立ち去ってしまいました。

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