2011年9月、大手製紙メーカーとして知られる大王製紙の当時の会長、井川意高(もとたか)氏が、自身のグループ企業の子会社から総額約105億円もの多額の資金を不正借り入れしていたことで、日本中のメディアを騒がせました。
彼がそんな多額のお金を必要とした原因は、106億8000万円にものぼったというカジノの負け金を払うためだったことも、大きく話題になりました。この失敗を決定づけた現場は、シンガポールにあるホテル・マリーナベイ・サンズのVIP向けカジノでしたが、以前は日本からアクセスがよいマカオにあるカジノによく足を運んでいたそうです。
しかし、カジノのVIPルームの世界では、100億円を超える負けを作ることなど、日常茶飯事。実際、僕自身も多くの資産を失う人たちを、数多く見てきたのです。
「カジノにハマらない人はいますか?」
そう質問されることがありますが、僕個人の経験からいうと、これまでにそういう人は1人もいませんでした。少なくとも僕自身がアテンドすれば、もれなく全員をカジノにハマらせる自信があります。
カジノには人間の欲望が、すべて詰まっています。
まず、瞬時にして大金を稼ぐことができるという点。
たとえば、1万円を持っている人であれば、たった1日でそのお金を100万円にすることができるのです。バカラの場合、たった2分の1の確率の運だけで、持ち金を100倍近くに変えることができる。これを目の当たりにして、ハマらない人はなかなかいません。
ただ、そうして楽して一瞬の間に稼いだ大金を手にすると、当然人生がおかしくなる人が出てきてしまうもの。それが、大金に慣れている富豪と言ってもそうなのです。
VIPルームのお客様になるには、まず最低でも140万円のデポジットが必要。さらに、ハイリミットでの1ゲームの最低の賭け金は14万円からです。正直、信じられない金額が日々やりとりされているのですが、そこに集う人々のお金の使い方は半端ではありません。
ジャンケットのエージェントとして、僕はこの6年ほどの間、年間300人近いお客様をアテンドしてきました。どのお客様も予算は最低1億円。多ければ年間100億円単位のお金を使って帰るような方々も決して少なくありませんでした。